「成功した人」を紹介するだけで、社内報は本当に人を動かせるのか?

社内報をつくっていると、よくこんな企画があります。

「活躍している社員を紹介したい」
「成果を出している人を取り上げたい」
「頑張っている社員を紹介して、みんなの刺激にしたい」

もちろん、悪い企画ではありません。

会社の中で頑張っている人に光を当てることには意味がありますし、その人の仕事や考え方を知ることで、「自分も頑張ろう」と思う人もいるでしょう。

でも、私は時々思うのです。

「成功した人」を紹介するだけで、本当に人は動くのだろうか。

「すごい人」で終わってしまうことがある

たとえば、営業成績トップの社員を紹介するとします。

「年間売上○億円を達成」
「新規顧客を○社開拓」
「社内表彰を受賞」

確かにすごい。

でも、それを読んだ社員が、

「よし、自分もやってみよう」

と思うとは限りません。

むしろ、

「この人だからできるんだろうな」
「自分とは違う世界の話だ」
「もともと能力が高い人なんでしょう」

と感じてしまうこともあります。

成功が大きければ大きいほど、読み手との距離が開いてしまうことさえあります。

これは、社内報をつくる上で意外と大きな問題です。

人が知りたいのは「結果」より、その途中なのかもしれない

では、何を伝えればいいのでしょうか。

私は、結果そのものよりも、

「そこに至るまでに何があったのか」

を伝えることが大切なのではないかと思っています。

最初からうまくできたわけではない。

失敗したことがある。
悩んだことがある。
誰かに助けてもらったことがある。
途中でやめようと思ったこともある。

それでも、ある人との出会いや、ちょっとした出来事、何気なくかけられた言葉をきっかけに、少しずつ仕事への向き合い方が変わっていった。

そういう「途中」が見えると、成功した人は突然、自分たちと同じ場所に立っている人になります。

「この人も最初からできたわけじゃなかったんだ」

そう思えた瞬間に、記事と読み手との距離が縮まります。

響くところは、誰しも違う

そして、もう一つ大切だと思っていることがあります。

そもそも、一つの記事を読んで、全員が同じところに心を動かされるわけではありません。

ある人は、「年間売上○億円」という結果に刺激を受けるかもしれない。

ある人は、失敗から立ち直った話に共感するかもしれない。

ある人は、上司からかけられた何気ない一言に心を動かされるかもしれない。

また別の人は、「家族との時間を大切にしている」という、仕事とは直接関係のない話に、その人らしさを感じるかもしれません。

響くところは、誰しも違います。

だから社内報で大切なのは、「ここに感動してください」「この人を見習ってください」と、読み手に答えを渡すことではないのだと思います。

むしろ、一人の人間をできるだけ立体的に伝えること。

成功だけでなく、失敗や迷いもある。
仕事だけでなく、その人なりの価値観や日常もある。
本人の努力だけでなく、周囲との関係もある。

いろいろな「引っかかり」を記事の中に置いておく。

すると、読む人それぞれが、自分なりの場所で何かを受け取ってくれます。

社内報ができるのは、誰かを決められた方向へ動かすことではなく、その人自身が何かを感じ、考え始めるきっかけを、できるだけたくさん置いておくことなのかもしれません。

「その人が何をしたか」だけでは足りない

そして、人を立体的に伝えようとすると、その人だけを見ていても足りないことに気づきます。

私たちはつい、

「本人が努力した」
「本人が工夫した」
「本人が成長した」

という物語をつくってしまいます。

でも、本当にそうでしょうか。

その人の周りには、教えてくれた先輩がいたかもしれません。

失敗した時にフォローしてくれた上司がいたかもしれない。

挑戦させてくれた会社があったかもしれない。

何気ない雑談の中で、ヒントをくれた同僚がいたかもしれません。

人は、一人で成長しているわけではありません。

人と人との間にある関係性の中で、少しずつ変わっていく。

だとすれば、社内報が伝えるべきなのは、「成功した人」だけではなく、

「その成功が生まれた関係性」

なのではないでしょうか。

「成功者」をつくる記事から、「自分にもある」を見つける記事へ

社内報の記事を読んだ人に、

「あの人はすごい」

と思ってもらう。

それも一つの成果です。

でも、そこで終わってしまうのは、少しもったいない。

「あの人にも、こんな時期があったんだ」

「自分にも似た経験があるな」

「この考え方なら、自分も少し取り入れられるかもしれない」

「そういえば、自分の周りにも助けてくれている人がいるな」

そんなふうに、記事の中の誰かの物語が、読み手自身の経験とつながっていく。

そして、そのつながり方は、人によって違っていい。

私は、そこに社内報の面白さがあると思っています。

社内報は、人を直接動かすものではない

社内報をつくったからといって、人がすぐに変わるわけではありません。

「こういう社員になりましょう」と書いたからといって、そうなるわけでもありません。

そもそも、人を外から思い通りに変えることなんて、できないのだと思います。

でも、

誰かの経験を知る。
知らなかった仕事を知る。
その人が抱えていた迷いを知る。
誰かとの関係の中で変わっていった過程を知る。

その中のどこに心が動くのかは、読み手に委ねられています。

そして、何か一つでも引っかかるものがあれば、

「あの人って、そういう人だったんだ」

と、それまでとは少し違って見えるかもしれません。

そこから会話が生まれるかもしれない。

関係性が変わるかもしれない。

そして、その変化の中から、次の行動が生まれるかもしれません。

だから私は、

社内報は、人を直接動かすものではなく、人が動き出す「関係性」をつくるメディアなのではないか。

そんなふうに考えています。

成功した人を紹介することが悪いわけではありません。

大切なのは、その人を「すごい人」として壇上に置いて終わらせないこと。

その人が迷い、失敗し、誰かと関わりながら変わってきた過程まで伝える。

そして、読み手がどこに共感し、どこに引っかかり、何を持ち帰るのかを決めすぎない。

響くところは、誰しも違う。

だからこそ、社内報は人を一面的に描くのではなく、その人のいろいろな面を伝えていく。

その中のどこかで誰かと誰かがつながる。

私は、そんな小さな接点を社内に増やしていくことも、社内報の大切な役割なのだと思います。

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