社内報の社員紹介には「公表効果」というメリットがある

 公表効果というのをご存知でしょうか? 口に出した言葉(例えば目標)が発した本人の言動に影響を与え、その通りになっていくというものです。よくダイエットや禁煙などを行うときに、決意表明や後に引けない状況にあえて追い込む……ようなことにも使われる、とても効果的なものです。

 実は、この公表効果を社内報の中、特に人物紹介部署の紹介などで上手く活用することで、社員の目標達成や、部署間のコミュニケーションの円滑化などに貢献することができるのです。

社内報で公表効果を使う場合のメリット

  1. 自分の意識が変わる
  2. 後に引けない状況を作れる
  3. 応援者が現れ、やる気がアップする
  4. 情報が集まってくる

1.自分の意識が変わる

 社員紹介のインタビュー項目でポピュラーなものに、仕事の内容や役割、また仕事をする上で気をつけていることなどがあります。

 仕事上における自分の役割を周りに対して明確な言葉で表す……実は、こういう機会は意外にも少ないものなのです。例えば、課長職の方で考えてみましょう。
 まずは、課に所属する部下のマネジメントや業務の管理という役割があります。数値目標を達成するための直接的な管理者としての役割ですね。また、部下の教育や指導など指導者としての役割もあります。他にも業務フローの前後に位置する部署や関連部署との連携や調整という役割もあります。実は、多くの社員は複数の役割を持っています。これら一つひとつの役割について、明確に言語化し周囲に公表する機会はそれほどありません。人事考課などのクローズな場で行われることはあるのですが、社内全体に向かって公表することは少ないはずです。

 社内報の人物紹介において、仕事の役割や仕事をする上で気をつけていることを掲載することで、自分の役割が周囲の社員に明確になり、改めて自分の役割を再認識し、意識を変えることができるのです。

2.後に引けない状況を作れる

 個人の目標、例えば、「営業が獲って来た短納期の仕事や難易度が高い仕事に対しても『出来ない』とは言わない。」と社内報で公表したとしましょう。言った以上は、“そう在らねば!”という意識が働き、簡単に諦めるようなことはしません。
 これを続けていくと、「できるようにするためにはどうすれば良いか?」という発想の転換が起こり、新しいやり方を考えたり、人を巻き込むことを考えたり、できるようにするために様々な模索を始めます。そして、この経験が対応力や応用力となって身に付いていくことがあります。ある意味では自分を追い込むことになるのですが、公表することで見えない外部の圧力を自分の能力アップに活かすことができるのです。まさに、ダイエットや禁煙をしていることを公表し、逃げ場を無くし達成しようとするのと同じ状況です。これは数値目標にも使うことができます。

3.応援者が現れ、やる気がアップする

 今自分が取り組んでいること、頑張っていること、興味を持っていることを公表することで、周りの人がその人に興味や関心を持ち始めます。やがて、その興味・関心は、応援行動を行う心理である人と繋がっていることに置き換わっていきます。
 人は頑張っている人を見ると応援したくなります。過去の自分がそうだったから応援したくなるのか、不利な状況にある人を応援したくなるアンダードッグ効果と言われるものなのか、それとも仲間意識からなのか、理由は様々だと思いますが、その根本は心理的な繋がりを求めているのでは無いかと思います。みんな頑張っている人に“関わりたい”のです。
 自分を応援してくれる人が居ることがわかれば、自ずとやる気が出ます。「頑張ってよ!」と言ってもらえるだけで、一人の時よりも何倍もの力を発揮することができるようになります。自分だけのことではなくなってしまうのです。自分の頑張りが周りの人の笑顔にも繋がるとなれば、尚更です。

4.情報が集まってくる

 自分の目標や頑張っていることが周囲に認知されると、情報が集まってきます。情報というのは人が持って来てくれるものです。1人だと、必死に情報をかき集めなければいけませんが、周りの人の力を借りると、自然と情報が集まり出します。例えば、その情報に詳しい人から有用なことを教えてもらったり、詳しい人を紹介してもらったり、意見交換をすることができたり……。公表することで、目標や夢の達成を助けてくれる情報に出会う確率が上がるのです。

社内報で公表効果を使う場合のデメリット

  1. ドリームキラーが出てくることがある
  2. 達成できない(言っていることとやっていることが違うなど)の場合、周囲の目が痛い
  3. 公表したことで満足してしまい、行動に結びつかないことがある

1.ドリームキラーが出てくることがある

 目標や関心事などを公表した場合のデメリットに「ドリームキラー」が現れることがあります。ドリームキラーとは、否定的な言葉によって、その人の夢や目標を壊そうとする人です。例えば、「今年中にあの資格を取る」とか、「売上目標を120%達成する」と公表した場合に、「今からは無理だろう」「それ諦めて、こっちをした方が良いんじゃない」など、他人の足を引っ張ろうとする人たちです。こういうことに長けている人は一定数存在し、他者の変化を畏れ、自分と同じ土俵に引きずり込もうとしてきます。こういう言葉を掛けられると、やる気を削がれるだけでなく、『やっぱり無理かも…‥』と諦めてしまう原因にもなります。

2.達成できない(言っていることとやっていることが違うなど)の場合、周囲の目が痛い

 例えば、ダイエットや禁煙で、「来年までに5キロ痩せる!」「禁煙するぞ!」と公表してみても、一年経っても実現できなかったら、「5キロ痩せるんじゃなかったっけ?」「あれ?禁煙は?」と思われているのではないかと感じることがあります。そして、言われてもいないのに先回りして弁解してみたり……。仕事で言えば、「営業が獲ってきた仕事は断らない!」と言っていたのに、断らざるを得ない状況が発生してしまい、実際にできなかったなど。周りの人がそこまで思っているかどうかは別にして、公表した本人が一番それを感じてしまい、気持ちが萎縮してしまうかもしれません。

3.公表したことで満足してしまい、行動に結びつかないことがある

 夢や目標を公表することは、ある種の達成感を生み出すことがあります。その夢や目標に取り組んでいる自分に自己満足をしてしまうのです。行動していること自体に意味を感じてしまい、本来の目的や目標がボヤけてしまうのです。
 これの回避方法は、目的の言語化と目標の数値化をセットで行うことです。例えば、「営業が獲ってきた仕事は断らない!」という目標の本当の目的は何か?業務のキャパアップのためや、数をこなすことで、スキルをアップさせ量から質への転換を図るなど、目的があるはずです。それをしっかりと言語化しておき、またその目標を数値化し見える化させておくことが、中途半端な状態や道なかばで達成感を感じてしまい、行動に結び付かない状態に陥るのを防いでくれます。

まとめ〜社内報の社員紹介で公表効果を使う場合は……

 以上のように、公表効果にはメリットもデメリットも存在します。社内報の社員紹介でこの効果を上手く発揮させるには、少しばかりテクニックが必要です。例えば、その夢や目標を持つことになった経緯まで紹介したり、公表する夢や目標を選別したりするなどです。当たり前ですが、なんでも公表すれば良いというものではありませんし、公表することが適している内容というのもあります。その辺りをしっかりと練った上で取材し社内報のコンテンツとしてまとめてみられてはいかがでしょうか。