「主体性を持て」と言うほど、人は動かなくなる?〜「自ら動く」を生み出すもの〜

「もっと主体性を持ってほしい」

多くの会社で耳にする言葉です。

「もっと自分で考えてほしい。」

「指示待ちではなく、自ら動いてほしい。」

管理職研修でも、新入社員研修でも、「主体性」は必ずと言っていいほど登場します。

もちろん、その願いはよく分かります。

会社は、一人ひとりが自ら考え、動いてくれる組織であってほしい。

でも、私はいつも少し不思議に思うのです。

もし「主体性」が言葉で教えられるものなら、世の中の会社はとっくに主体性にあふれているはずです。

それなのに、何度も「主体性を持て」と言われ続けている。

ということは、主体性とは「教えるもの」ではないのではないでしょうか。

「主体性」は命令できない

考えてみれば当たり前のことです。

「自発的にやってください。」

これは少し矛盾した言葉です。

「命令だから、自主的に動け。」

 そう言われた瞬間、それはもう自主性ではありません。

主体性とは、誰かから与えられるものではない。

まして、命令できるものでもない。

では、人はどんなときに「自ら動こう」と思うのでしょう。

人は、人によって動くのではない

よく、「あの上司だから頑張れた。」と言います。

でも、本当にそうでしょうか。

同じ上司の下でも、生き生き働く人もいれば、そうでない人もいます。

逆に、異動した途端に別人のように活躍する人もいます。

つまり、人を動かしているのは「上司」という個人だけでは説明できません。

職場の雰囲気。

仲間との関係。

安心して失敗できる空気。

自分の仕事が誰かの役に立っている実感。

小さな成功体験。

こうしたものが重なったとき、

人は「動こう」と決意するというより、

気がつけば動いていた。

という状態になることがあります。

主体性は「結果」であって、「原因」ではない

私は、主体性は原因ではなく結果なのだと思っています。

良い環境だから主体的になる。

信頼されているから挑戦する。

仲間がいるから一歩踏み出せる。

つまり、

主体性とは、良い関係性から生まれる現象なのではないでしょうか。

だから、

「主体性を持て」

ではなく、

「主体性が生まれる環境をつくろう」

という問いに変えた方が、組織は前に進むような気がしています。

社内報ができること

ここで社内報の話になります。

社内報は、人を主体的にすることはできません。

でも、

「この人も挑戦しているんだ。」

「失敗してもいいんだ。」

「自分の仕事は、こんなふうにつながっているんだ。」

そんな物語を届けることはできます。

社員インタビュー。

座談会。

投稿企画。

どれも「主体性を教える記事」ではありません。

でも、それらを読んだ誰かが、

「ちょっとやってみようかな。」

と思うことがあります。

社内報は、人を動かすことはできない。

でも、人が動きたくなる土壌を育てることはできる。

「主体性を持て」ではなく、「主体性が生まれる会社」を

植物に、

「もっと育って。」

とは言いません。

土を耕し、

水を与え、

日当たりを整える。

育つ環境を整えます。

組織も同じなのかもしれません。

主体性を要求するより、

主体性が芽生える土壌をつくる。

その方が、ずっと自然です。

そして、その土壌を耕す仕事の一つが、社内報なのだと思います。

社員一人ひとりが、お互いを知る。

誰かの挑戦を知る。

誰かの失敗を笑える。

「読んだよ。」

そんな一言が交わされる。

その積み重ねが、少しずつ土を柔らかくしていく。

やがて、その土から自然に芽が出る。

私たちは、その芽を見て「主体性」と呼んでいるだけなのかもしれません。

このシリーズを書きながら、見えてきたこと

この5本の記事を書きながら、私自身、一つのことに気づきました。

最初からシリーズにしようと思っていたわけではありません。

書き進めるうちに、それぞれの記事が一本の線でつながり始めたのです。

  • 「指示する側と従う側だけでは説明しきれない、組織の「動き」の正体」
  • 「人と人の間に、言葉を置いてゆく。〜社内報の本質〜」
  • 「ジャズの即興演奏で見られる「グルーブ感」・・・社内報で振り返るチームがやる気に満ちてきた発火点」
  • 「「いい会社」には、いい雑談がある。〜組織を動かす余白の正体〜」
  • 「「主体性を持て」と言うほど、人は動かなくなる?〜「自ら動く」を生み出すもの〜」

一見すると、それぞれ別々のテーマを扱っているように見えます。

でも、その根底には、一つの共通した考え方が流れていました。

人は変えられない。でも、人と人との関係性や「場」はデザインできる。そして、その場が人を変えていく。

振り返ってみると、私は10年以上、社内報という仕事を通して、このことを実践してきたのかもしれません。

社内報は、人を説得するためのメディアではありません。

社員を教育するためのメディアでもありません。

誰かを変えようとするのではなく、人と人との間に言葉を置き、会話を生み、関係を育み、その積み重ねによって組織の空気を少しずつ変えていく。

そう考えると、社内報は単なる情報誌ではなく、「関係性を編集するメディア」と言えるのかもしれません。

私は、これらの記事を通して、社内報のノウハウを書きたいわけではありません。

社内報という実践を通して見えてきた、「組織はどうすれば育っていくのか」という問いを、

一つひとつ言葉にしていきたいと思っています。

もしかすると、これらの記事は社内報について書いているようで、

その本質は「人と組織の関係性」について書いているのかもしれません。

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