会社の「当たり前」は、誰が決めたのか。〜言葉がつくる組織の現実〜

「うちの会社では、これが当たり前だから」

組織の中では、そんな言葉がよく使われます。

新人が入ってきた時。
異動してきた人が戸惑った時。
業務改善をしようとした時。

私たちは、何気なく「当たり前」という言葉を使っています。

でも、その「当たり前」は、一体いつ、誰が決めたものなのでしょうか。

最初から存在していたものではありません。

誰かの判断。
誰かの成功体験。
過去の出来事。
先輩たちが積み重ねてきた習慣。

そうした一つひとつの積み重ねが、いつの間にか「普通」になり、「当たり前」になっていきます。

つまり、「当たり前」とは自然に存在するものではなく、人と人との関係の中でつくられていくものなのです。

言葉は、組織の現実をつくる

組織の中で交わされる言葉には、大きな力があります。

例えば、

「うちは失敗が許されない会社だから」

という言葉が繰り返される組織では、社員は失敗を隠すようになります。

一方で、

「挑戦した結果の失敗から学ぼう」

という言葉が根付いている組織では、失敗は改善のきっかけになります。

同じ出来事が起きても、そこに置かれる言葉によって、その意味は大きく変わります。

言葉は単なる情報伝達の手段ではありません。

人の見方を変え、行動を変え、やがて組織そのものを変えていく力を持っています。

経営者の何気ない一言が、文化になる

特に、経営者やリーダーの言葉は大きな影響を持ちます。

本人にとっては何気ない一言だったとしても、受け取る側にとっては「会社からのメッセージ」になります。

「それは難しいんじゃないか」

という一言が、社員の挑戦を止めることもあります。

逆に、

「まずやってみよう」

という一言が、社員の背中を押すこともあります。

もちろん、経営者がすべての言葉を管理する必要はありません。

大切なのは、自分たちが発している言葉が、組織の中でどのような意味を持って広がっていくのかを意識することです。

組織にも「オートクライン」があるのかもしれない

コーチングや選択理論心理学などで使われる「オートクライン」という考え方があります。

人は、自分が発した言葉を自分自身が聞くことで、その言葉によって自分の認識や行動に影響を受けます。

「自分には無理だ」

と言い続ければ、その言葉が自分自身を制限していく。

「まずやってみよう」

と言い続ければ、その言葉が自分の可能性を広げていく。

これは個人だけの話ではないのかもしれません。

組織の中でも、日々使われる言葉が、組織自身に返ってくる。

「昔からこうだから」

という言葉が多い組織は、過去を守る文化になっていく。

「もっと良くするにはどうしたらいいか」

という言葉が多い組織は、変化を受け入れる文化になっていく。

組織もまた、自分たちが発している言葉によって、自分たち自身を形づくっているのではないでしょうか。

言葉の積み重ねが、やがて社風になる

組織の中で繰り返される言葉は、少しずつ人の考え方や行動に影響を与えていきます。

最初は、誰か一人が何気なく発した言葉だったかもしれません。

しかし、その言葉が共感され、繰り返し使われ、次の世代へ受け継がれていく。

そうすると、いつしかその言葉は、その会社らしさになります。

「あの会社は、挑戦を大切にしているよね」

「あの会社は、人を大切にしているよね」

「あの会社は、昔からこういうところがあるよね」

外から見た印象も、社内の空気感も、日々交わされる言葉の積み重ねから生まれます。

社風とは、どこかに書かれた理念や制度だけでつくられるものではありません。

社員一人ひとりが、日常の中でどんな言葉を使っているか。

その集合体が、やがて社風になっていくのです。

ただし、同じ言葉を共有すればいいわけではない

ここで注意しなければならないことがあります。

組織の方向性を揃えることは大切です。

しかし、それは全員を同じ考え方にすることではありません。

いわゆる「金太郎飴」のような組織をつくることではないのです。

大切なのは、考え方の多様性を持ちながら、向かっている方向を共有すること。

同じ答えを持つことではなく、同じ問いを持つことです。

例えば、山の頂上を目指すという目的は共有する。

でも、そこへ向かう道は一つではありません。

それぞれの経験や個性を活かしながら、違う道を歩む人がいるからこそ、組織は強くなります。

言葉で人を縛るのではなく、言葉によって考えるきっかけをつくる。

そこに、本当の意味での文化づくりがあるのだと思います。

社内報は、組織に言葉を置く仕事

私が社内報づくりで大切にしていることも、実はここにつながっています。

社内報は、会社から社員へ情報を届けるだけのものではありません。

社員同士の間に、新しい言葉を置いていくものです。

「この人は、こんな想いで仕事をしている」

「普段は見えないけれど、こんな経験をしてきた」

そんな言葉が共有されることで、人への見方が変わります。

関係性が変われば、組織の空気も変わります。

組織文化とは、制度やルールだけでつくられるものではありません。

日々交わされる言葉。

その言葉から生まれる関係性。

そこから少しずつ形になっていくものです。

会社の「当たり前」は、誰か一人が決めるものではありません。

経営者の言葉。
社員同士の会話。
日々の小さな判断。

その積み重ねによって、少しずつつくられていきます。

だからこそ、組織を変えたいと思った時、まず見直すべきなのは「人」ではなく、人と人の間に置かれている「言葉」なのかもしれません。

良い社風とは、同じ言葉を全員が口にすることではない。

同じ方向を向きながら、それぞれの言葉で語り合える状態なのかもしれません。

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