社内報は、本当に「第Ⅱ象限の仕事」なのか?―「15の共有」から見えてくる、本当の役割 ―
社内報の話をすると、よく出てくるのが「緊急と重要のマトリックス」の話です。
社内報は第Ⅱ象限。
つまり「重要だが、緊急ではない仕事」に分類されます。
人材育成、社風づくり、理念浸透。
どれも大切なことばかりです。
しかし現実には、社内報は後回しにされがちです。
経営者も担当者も、こう言います。
「大事なのは分かっているんだけどね」
「今はそれどころじゃないんだよ」
この言葉を、私は何度も聞いてきました。

分かっているのに、動かない理由
第Ⅱ象限の話は、頭では理解できます。
しかし、行動にはつながりにくい。
なぜなら、第Ⅱ象限の問題は
「痛みが見えにくい」からです。
- 社風が悪くても、すぐには数字に出ない
- 情報共有が足りなくても、今日の売上は立つ
- 判断基準がバラバラでも、明日は何とかなる
だから、後回しになるのです。
一方で、
- 大きなクレーム
- 赤字案件
- 納期トラブル
のような問題は、すぐに上に報告が上がります。
緊急で、金額が動き、放っておけないからです。つまり、経営者の視界に入りやすいのは、第Ⅰ象限の問題ばかりなのです。
なぜ社長は「共有不足」に気づかないのか
ここで一つの疑問が出てきます。
「そんなに共有が足りていないなら、
社長や経営層は気づくのではないか?」
しかし現実には、共有不足ほど経営層には見えにくいものです。理由はシンプルです。情報は、途中で形を変えて上がってくるからです。
忖度はどこで生まれるのか
組織の中では、情報は次のように流れます。
現 場
↓
一般社員
↓
管理職
↓
経営層
↓
社 長
このどこかの段階で、必ず「解釈」が入ります。
例えば現場で、
「このやり方は正直しんどい」
「現場では不満が出ている」
という声があったとします。しかし、それが管理職に上がる頃には、
「少しやりにくさはあるようです」
になり、経営層に上がる頃には、
「大きな問題はありません」
という報告になることもあります。これが、いわゆる「忖度」です。ただし、これは悪意で起きているわけではありません。
- 社長に余計な心配をかけたくない
- 自分の評価を下げたくない
- 組織を混乱させたくない
そうした善意や自己防衛が重なって、情報は少しずつ丸くなっていきます。
情報はどこで目詰まりするのか
情報の目詰まりが起きやすいのは、主にこの二か所です。
① 経営層と管理職の間
- 方針は出ている
- しかし現場の実態が上がってこない
結果として、「方針はあるのに動かない会社」になります。
② 管理職と現場の間
- 管理職は危機感を持っている
- しかし現場は他人事
あるいは逆に、
- 現場は不満だらけ
- しかし管理職には届いていない
という状態です。この層で情報が止まると、組織の温度差が一気に広がります。
同じ情報でも温度が違う会社
共有不足は、次のような形で表れます。
同じ会議に出ていたのに、
- Aさんは「すぐ動こう」と思う
- Bさんは「様子を見よう」と思う
- Cさんは「自分には関係ない」と思う
情報は共有されているのに、意味が共有されていない状態です。
また、
- 営業は危機感を持っている
- 総務は他人事に感じている
というように、プロフィットセンターとコストセンターの間でも温度差が生まれます。
このように、会社の問題の多くは能力の差ではなく、共有の温度差から生まれます。
見えないところで進む「共有不足」
ところが、会社の不調の多くは、もっと静かなところで進行します。
例えば、
- 若手がなんとなく辞めていく
- 部門同士で小さな不満が溜まる
- 管理職だけが疲弊していく
- 同じ仕事なのに判断がバラバラになる
こうした問題は、すぐに金額の話にはなりません。
だから、
「わざわざ社長に言う話でもない」
「そのうち何とかなるだろう」
と判断され、中間層で止まってしまいます。その結果、社長の周りだけ空気が良くなり、現場との温度差が広がっていきます。
人は嫌な報告をしたくない
これは組織の自然な力学です。人は誰でも、
- 怒られたくない
- 評価を下げたくない
- 面倒なことにしたくない
と思っています。だから、
- 良い話はそのまま上がる
- 悪い話は少し丸めて伝わる
- グレーな話は上がってこない
という流れが生まれます。特に、共有の問題は厄介です。現場の不満や温度差は、
- 数字に出にくい
- 緊急性がない
- 感情の話になりやすい
という特徴があります。そのため、報告されずに静かに蓄積していくのです。
同じ情報でも温度が違う会社
共有不足は、次のような形で表れます。
同じ会議に出ていたのに、
- Aさんは「すぐ動こう」と思う
- Bさんは「様子を見よう」と思う
- Cさんは「自分には関係ない」と思う
情報は共有されているのに、意味が共有されていない状態です。
また、
- 営業は危機感を持っている
- 総務は他人事に感じている
というように、プロフィットセンターとコストセンターの間でも温度差が生まれます。
さらに、
- 経営は焦っている
- 管理職は様子見
- 現場は無関心
という温度差があると、方針はなかなか動きません。
このように、会社の問題の多くは能力の差ではなく、共有の温度差から生まれます。
共有のズレを見える化する「15の共有」という視点
こうした温度差や認識のズレは、感覚的には分かっていても、なかなか言葉にしにくいものです。
そこで私は、組織の情報共有を15の視点に分解して捉える「15の共有」という考え方を提案しています。
例えば、
- 理念の共有
- 方針の共有
- 判断基準の共有
- 成功事例の共有
- 失敗事例の共有
- 現場の実情の共有
など、組織の中には、さまざまな種類の「共有」が存在します。
多くの会社では、
- 売上
- 数字
- スケジュール
といった情報は共有されています。
しかし、
- 判断の背景
- 現場の苦労
- 仕事に対する想い
- 成功や失敗のストーリー
といった部分は、意外と共有されていません。このどこかが欠けると、組織の中に温度差が生まれます。そしてその温度差が、やがて対立や離職、クレームといった第Ⅰ象限の問題へとつながっていくのです。社内報は、この「15の共有」を少しずつ埋めていく装置でもあります。数字では見えない部分を言葉にし、人の想いを物語として共有することで、組織の温度を揃えていく。それが、社内報の本質的な役割です。
社内の「当たり前」は、本当に共有されているのか
先日、あるクライアントを訪問したときのことです。
その会社では、B型作業所に内職を依頼する準備をしていました。
数日前に作業所から納品があったのですが、出来上がってきたものは、間違いだらけだったそうです。
幸いなことに、最終のお客様に届ける前に社内で気づき、すべてやり直すことができました。
原因は単純でした。
「どう伝えたら、間違えずに作業してもらえるか」
という視点が、社内で十分に検討されていなかったのです。
そのとき、私がたまたま訪問していたこともあり、「この指示書を見て作業してみてください」と言われ、実際にやってみました。
すると、私も同じところで間違えました。その作業は、その会社にとっては普段から当たり前にやっている作業でした。だからこそ、
「こんなところで間違うはずがない」
という思い込みがあり、事前に気づくことができなかったのです。
「誰がやっても間違えない仕組み」が必要な現場
特に、B型作業所のように、さまざまな背景を持つ方が作業に関わる現場では、
「誰が見ても分かる」
「誰がやっても間違えない」
そんな仕組みが必要になります。
だからこそ、
- 情報の渡し方を工夫すること
- 当たり前だと思っていることも言葉にすること
- 暗黙のルールを見える形にすること
が、とても重要になります。社内では当然のように行われている作業でも、外部の人にとっては、すべてが初めての情報です。その前提に立てば、
「そこまで説明しなくても分かるだろう」
という考え方自体が、実は共有不足の入り口なのかもしれません。逆に言えば、B型作業所との付き合いがあったからこそ、
- どこが分かりにくいのか
- どこで間違えるのか
- 何を共有すべきなのか
という、情報共有の大切さに気づくことができたとも言えます。外からの視点が入ったとき、初めて見える「当たり前のズレ」があるのです。
第Ⅱ象限の問題は、やがて第Ⅰ象限になる
この作業の問題も、最初は第Ⅱ象限の問題でした。
- 普段は誰も困っていない
- 数字の問題も出ていない
- 緊急性もない
しかし一歩間違えば、
- 誤った製品が出荷される
- クレームになる
- 信用問題になる
という、第Ⅰ象限のトラブルに直結していました。共有不足は、最初は静かな問題です。しかし放置すると、必ず表面化します。離職、対立、クレーム、売上低下。その多くは、その前に共有の温度差が生まれています。
社内報の本当の役割
ここまで見てきたように、
- 情報は途中で丸くなる
- 忖度が入る
- 層ごとに温度差が生まれる
- 当たり前が共有されていない
という状態が続くと、会社の中には見えない断絶が生まれます。
そこで必要になるのが、全員に同じ情報が届く装置です。それが、社内報です。
社内報は、組織の温度を揃える装置です。
社内報は「静かな装置」である
社内報は、売上を直接生む装置ではありません。派手な成果も出ません。しかし、共有不足を放置した会社は、必ずどこかで歪みが出てきます。離職、対立、誤解、不信感。それらはすべて、共有の温度差から生まれます。
社内報は、その歪みを整える静かな装置なのです。
最後に
社内報が必要かどうかを考える前に、一度、自社の状態を見てほしいと思います。
- 情報は途中で丸くなっていないか
- 忖度が起きていないか
- どこかで情報が止まっていないか
- 同じ話を聞いても温度差がないか
もしそこにばらつきがあるなら、それは能力の問題ではなく、共有の問題かもしれません。
社内報の役割は、情報を増やすことではありません。組織の温度を揃えること。その小さな積み重ねが、会社の血流を整え、大きなトラブルを未然に防ぐ力になります。になります。
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