あえて曖昧なまま保留にしておく:社内報における新しい表現技術

 情報を伝える社内報では、明確でわかりやすい文章が重要とされる一方で、すべてを語り尽くさない「あえて曖昧さを残す」という手法が新たな価値を生むことがあります。この曖昧さは、読者に考えさせ、想像させる余地を与える力を持っています。

 曖昧なまま情報を保留することには、一見リスクが伴うように感じられるかもしれません。しかし、読者に「続きが気になる」「自分ならどうするかを考える」きっかけを与えることで、社内報は単なる情報提供ツールから、読者を巻き込む参加型のメディアへと進化します。本記事では、この手法の具体例とメリット、そして活用の際に注意すべきポイントを深掘りしていきます。

曖昧さがもたらす意外な効果

 曖昧さには、「全てを知りたい」という人間の本能を刺激する力があります。モナリザの微笑みが何世紀にもわたって人々を魅了しているのは、その表情に明確な答えがないからです。同じように、社内報における曖昧な表現は、読者に「この先どうなるんだろう」と考えさせる余地を作ります。

 たとえば、新しいプロジェクトの詳細をあえて伏せ、「次号で続報をお伝えします」と締めくくると、読者は自然と次号に期待を抱きます。また、「今後の取り組みについて意見を募集します」と問いかけることで、読者が能動的に考え、意見を伝える場を提供することができます。

 曖昧さはまた、社員同士の対話を促進するきっかけにもなります。「あの記事、どういう意味だろう?」「次の号で何が明かされるんだろう?」といった会話が生まれることで、社員間の交流が活発になります。

曖昧さを活かした記事構成の工夫

  1. 未完成のプロジェクトを特集する
    たとえば、「現在進行中の新商品開発」というテーマで、まだ完成していない試作の写真や、初期段階のアイデアを掲載します。そして「この商品がどんな形で完成するかは、次号をお楽しみに」と締めくくれば、読者の関心を引きつけることができます。
  2. 問いかけ形式の記事
    特定の課題について、「皆さんはどう思いますか?」と問いかける形の記事は、読者の想像力や意見を引き出す効果があります。たとえば、「今の働き方に足りないものは何だと思いますか?」といったオープンな質問を投げかけることで、社員の反応を促します。
  3. 視覚的な曖昧さを使う
    写真やイラストでヒントを与えつつ詳細を伏せる手法も有効です。たとえば、イベント特集で「この後ろ姿、誰でしょう?」といったクイズ形式にすることで、読者の関心を引きつけます。ビジュアルを工夫することで、曖昧さが遊び心として働きます。
  4. 未来予測を曖昧にする
    「このプロジェクトが成功すれば、どのような可能性が広がるのでしょう?」という形で、ゴールをあえて曖昧に描くことで、読者自身がその答えを想像する余地を与えます。

曖昧さを取り入れる際の注意点

 曖昧さを効果的に使うためには、その意図を読者が理解できるようにする必要があります。単に情報を隠すだけでは、混乱や不信感を招く可能性があります。

  • ゴールは明確に示す
    曖昧さを残す部分と、明確に伝える部分をしっかり分けることが重要です。たとえば、「詳細はまだ未定ですが、次号で発表します」といった一文を加えることで、読者に安心感を与えます。
  • 曖昧さを補完する文脈を用意する
    記事全体の文脈やテーマがしっかりしていれば、部分的な曖昧さは読者にとって好奇心を刺激するものとして働きます。文脈が曖昧すぎると、記事全体の意図が伝わらなくなるため、注意が必要です。

曖昧さが生む新たな可能性

 曖昧さを意図的に活用することで、社内報は単なる情報伝達の手段から、社員を巻き込む「コミュニケーションの場」へと変わります。すべての情報を提供するのではなく、読者に考える余地を与え、次号への期待感を高めることができます。

 また、曖昧さが生む余白が、社員同士の交流や意見交換を活性化させる効果も期待できます。たとえば、「この記事の続きが気になる」と感じた読者同士が話題にすることで、普段は関わりが少ない社員同士が接点を持つきっかけになるかもしれません。

結論:曖昧さを味方にする社内報作りを

 「あえて曖昧なまま保留にしておく」という技術は、社内報に新しい魅力をもたらす方法です。すべてを明確に語り尽くすのではなく、あえて余白を残し、読者が想像し、議論し、次を期待する場を作る。この手法を取り入れることで、社内報はより魅力的なコンテンツとなり、社員とのつながりを深めるツールとして進化します。

 社内報に、あえて曖昧なままにしておく記事を一つ取り入れてみてはいかがでしょうか。その曖昧さが、社員に新たな視点や意欲を引き出すきっかけとなるはずです。