社内報で共有すべき「組織力を高める“15の共有”」とは

 現在、多くの中小企業では、いかに人材を定着させるかがとても大きな課題となっています。社員の離職率を低下させるには、給与や待遇、福利厚生などの条件や環境の整備だけではなく、職場における人間関係や、居甲斐、やり甲斐、働き甲斐、生き甲斐など、社員の心理的な充足や社員同士の繋がりを感じさせる職場づくりも必要となります。
 そうした社員が定着する職場を作るには、社内で共有すべき事柄が15あるとされています。その15の共有と、どの共有が社内報が得意としているかについて解説します。

社員からの信頼関係を深める「15の共有」とは


 社員からの信頼を高めるのは、一朝一夕にできるものではありません。信頼が育まれ、社員の帰属意識や愛社精神が醸成されることで、組織の安定と成長が実現します。そこで重要なのが、「15の共有」です。これらの共有は、組織内での信頼や協力を促進し、個々の成長と組織全体のパフォーマンス向上に繋がります。今回は、15の共有がどのようにして組織内での信頼を深め、社内報でどのように活用できるかについて考えてみましょう。

信頼関係を育むための7つの共有

 まず、信頼関係を築くための7つの共有です。これらは、日常の業務やコミュニケーションの中で、特に意識するべき要素です。

  1. 分配の共有:業績や成果の分配だけでなく、喜びや責任を共有することで、共に成長しているという実感が得られます。
  2. 思い出の共有:共通の思い出や経験は、チームの一体感を生み出します。社内報や社内イベントで、成功体験や特別な出来事を振り返ることは、信頼構築に有効です。
  3. 情報の共有:透明性のある情報提供は、社員間の信頼を築く基盤です。社内報での定期的な情報発信や、経営状況の報告は、社員の安心感を高めます。
  4. 発言の共有:意見交換の場を設け、全員が自分の考えを発信できる環境を作ることが大切です。社内報でのアンケートやインタビューは、社員の声を拾い上げる良い方法です。
  5. 役割の共有:明確な役割分担と、それに基づく協力が重要です。組織内で誰が何を担当しているのかを共有することで、チームワークが向上します。
  6. 目標の共有:会社や部門の目標を全員が理解し、同じ方向に向かって進むことが必要です。社内報で目標やビジョンを明確に伝えることは、社員のモチベーションを高めます。
  7. 結果の共有:努力の結果を全員で共有することで、成功体験を皆で分かち合い、次への励みとなります。社内報でのプロジェクト報告や成功事例の紹介がこれに当たります。

成長を促すための4つの共有

 次に、社員個々の成長を促すための4つの共有です。

  1. チャレンジ・失敗の共有:失敗を恐れずにチャレンジできる風土を作るためには、失敗談や学びを共有することが大切です。社内報での失敗談特集や、失敗から学んだ教訓を共有する場を設けることが効果的です。
  2. 感動の共有:感動体験や成功の喜びを共有することで、社員のやる気を引き出します。社内報に感動的なエピソードを取り上げることで、ポジティブな雰囲気を作り出します。
  3. 達成感の共有:個々の努力が認められ、達成感を感じられる場を提供することが重要です。社内報での社員表彰やプロジェクト完了の報告がこれに役立ちます。
  4. 成長の共有:社員一人ひとりの成長を共有することで、会社全体の成長に繋げます。社員の成功体験やスキルアップのストーリーを共有することが、成長意識を高めます。

より高い次元への成長を促すための4つの共有

 最後に、より高い次元での成長を目指すための4つの共有です。

  1. 夢の共有:個々の社員が持つ夢や目標を共有することで、共に成長していくビジョンが見えてきます。社内報での夢や目標のインタビュー企画は、社員間の共感を生み出します。
  2. 人事の共有:人事の決定や異動、昇進について透明性を持たせることで、社員の安心感が高まります。人事の方針や決定を社内報で明確に伝えることは、重要な信頼構築の手段です。
  3. 経営の共有:経営層の考えや戦略を社員と共有することで、全員が一丸となって会社を発展させる意識が生まれます。定期的に経営陣からのメッセージやインタビューを社内報に掲載することが有効です。
  4. 理念の共有:会社の理念やビジョンを全社員が理解し、共感することで、組織としての一体感が生まれます。社内報で理念やビジョンを繰り返し発信することが、全員の方向性を一致させます。

社内報で実現する「15の共有」

 「15の共有」は、社内報を通じて効果的に実現することが可能です。社員の声や経験を取り上げ、成功体験やチャレンジを共有することで、社員間の信頼関係を強化し、成長を促進します。また、会社の理念やビジョンを定期的に発信することで、全社員が同じ方向を向き、共に成長するための基盤を作り上げることができるのです。信頼と成長を共に実現するために、社内報を活用して「15の共有」を意識的に取り入れてみましょう。

「15の共有」と社内報の相性

◎:とても良い  ○:良い  △:併用・補完的  ×:悪い

共有する内容社内報との相性
信頼関係を育む 1.分配の共有×
 2.思い出の共有
3.情報の共有
 4.発言の共有
 5.役割の共有
 6.目標の共有
 7.結果の共有
成長を促す 8.チャレンジ・失敗の共有
 9.感動の共有
10.達成感の共有
11.成長の共有
より高い次元への成長を促す12.夢の共有
13.人事の共有
14.経営の共有
15.理念の共有


社内報で「15の共有」を扱う際の一番のポイント

 社内報で「15の共有」を扱う際の一番のポイント、肝になる部分は、社員全体の共感と参加を促すことです。具体的には、以下の要素が重要になります。

1. 透明性と双方向のコミュニケーション

 社内報は一方的な情報提供の場ではなく、社員が自分の意見や考えを発信できる双方向のコミュニケーションツールとして活用されるべきです。特に「発言の共有」や「情報の共有」を通じて、社員全員が会社の状況や目標を理解し、自らの意見を反映させる場を提供することで、信頼感が生まれます。そのためには、社内報で社員を取り上げる企画を作り記事にすることなどが必要となります。社員の投稿企画や社内アンケートを行い、その結果を掲載するなども手段の一つです。

2. 共感を生むストーリーテリング

 「思い出の共有」や「成長の共有」、「感動の共有」など、個々の社員のエピソードやチームの成功体験を通して、感情に訴えるストーリーテリングを心がけることが肝心です。個人やチームが成し遂げたこと、チャレンジや失敗の共有があると、他の社員も共感しやすくなり、組織全体の一体感を生むきっかけとなります。

3. 会社のビジョンや理念との連動

 社内報を通して「理念の共有」や「経営の共有」を強調することで、全社員が会社の方向性を理解し、一丸となって目標達成に向けて行動できるようになります。これは組織の統一感を育み、全体のパフォーマンス向上に寄与します。

4. 継続的な発信と改善

 信頼関係や組織の成長は一度の発信で築けるものではなく、継続的に取り組むことが必要です。社内報を定期的に発行し、社員からのフィードバックを受け取りながら改善していくことで、より効果的な共有を実現することができます。

 これらのポイントを踏まえ、社内報を「社員全員が参加し、共感できる場」として活用することが、組織全体の信頼を深め、成長を促す肝になります。「15の共有」の中でも社内報と相性が良いものとそうでないものがあります。傾向としては、信頼関係を育むための共有より、成長やより高い次元の成長を促すための共有の方がパフォーマンスが高いと考えられます。
 このように、どのような企画で、どのように文章をまとめるかにより、組織づくりの支援が行える社内報となります。