視点を変えると新しい世界が見える:パースペクティブを活かした社内報の可能性

 同じ風景を見ても、人によって感じ方や解釈は異なります。視点が変われば、物事の見え方や理解が大きく変わるからです。この「パースペクティブ(視点や遠近法)」の考え方は、社内報づくりにおいても重要なヒントを与えてくれます。

 組織運営では、一つの出来事やテーマをさまざまな角度から捉えることで、新しい発見や気づきを得られることがあります。経営層と現場、社員と顧客、過去と未来。それぞれのパースペクティブを組み合わせることで、組織全体を多層的に描くことができるのです。本記事では、社内報に「パースペクティブ」の考え方を取り入れる方法と、その具体例を深掘りしていきます。

1. 同じテーマを異なる視点で描く

 ひとつのテーマをさまざまな視点で取り上げることで、記事に奥行きと立体感を持たせることができます。たとえば、新製品の開発をテーマにした場合、以下のような視点を組み合わせると、多面的な記事になります。

  • 経営者の視点:「市場に新しい価値を届けるための戦略」
  • 開発チームの視点:「課題を乗り越えた創意工夫の裏側」
  • 顧客の視点:「新製品がもたらす便利さと期待」

 同じテーマでも、立場によって見え方が異なることを示すことで、読者に新たな気づきを与えることができます。

2. 時間軸を意識したパースペクティブ

 視点の違いだけでなく、時間軸を組み合わせることで、組織の進化や変化を描くことができます。たとえば、以下のような構成を考えられます。

  • 過去:「創業当時の挑戦とビジョン」
  • 現在:「現在直面している課題と取り組み」
  • 未来:「次世代に向けた目標と展望」

 過去から現在、未来へとつながる記事は、読者に会社の歩みや将来への期待を感じてもらう効果があります。また、過去と現在を比較することで、組織の成長や進化を可視化することも可能です。

3. 異なる文化や価値観を取り入れる

 組織の中だけでなく、外部の視点を取り入れることで、新しい気づきを与える記事を作れます。たとえば、以下のようなアプローチが考えられます。

  • 顧客の視点:「なぜこの会社を選んだのか?」という顧客インタビューを通じて、社員が自社の価値を再認識できる記事。
  • 海外支社の視点:「海外の働き方から学ぶ」特集で、異なる文化や価値観を紹介。
  • 外部講師や専門家の視点:「今後の業界トレンド」を語るインタビュー記事で、社員に新たな視野を提供。

 これにより、社員が普段触れない視点を知るきっかけを作り、視野を広げる効果があります。

4. 視点の対比を活かす記事

 真逆の視点を並べることで、読者に考えるきっかけを提供します。たとえば、新規事業の推進をテーマに次のような対比を作ります。

  • 若手社員の視点:「挑戦する機会を得た喜び」
  • ベテラン社員の視点:「新規事業のリスクと慎重な対応の必要性」

 これにより、組織内で異なる意見や価値観があることを示しつつ、それらがどのように補完し合えるかを読者に伝えられます。

5. 読者自身のパースペクティブを変える仕掛け

 社内報を単なる読み物ではなく、読者自身が考えを深めるきっかけにする仕掛けを加えます。

具体例

  • クイズ形式:「この写真、何に見えますか?」として、同じ写真に異なるキャプションを付け、読者の解釈を引き出す。
  • 問いかけ:「この記事を読んで、あなたはどう思いましたか?」と結び、次号で読者の意見を取り上げる。
  • 体験型記事:「あなたの部署から見える課題とは?」と問いかけ、自分の視点を振り返る内容にする。

6. パースペクティブを可視化する工夫

 視覚的な要素を活用することで、読者がより直感的に異なる視点を理解できる記事を作ります。

  • 俯瞰図やフロー図:会社全体の構造や業務の流れを視覚化する。
  • クローズアップ写真:特定の場面や人物に焦点を当てた写真で、細部を伝える。
  • 比較写真:「新旧のオフィス風景」や「プロジェクトのビフォー・アフター」を対比的に見せる。

パースペクティブを活かす社内報が生む効果

  1. 多面的な理解を促進
    異なる視点や時間軸を組み合わせることで、会社やプロジェクトの全体像を立体的に描きます。社員が自分の役割をより明確に理解しやすくなります。
  2. 読者の興味を引きつける
    同じテーマでも新しい切り口を提示することで、読者に「新しい発見」を提供できます。これにより、社内報の読まれる頻度や期待感が高まります。
  3. 社内コミュニケーションの活性化
    異なる視点を提示する記事は、社員同士の会話や議論のきっかけを生みます。「この記事を読んでこう感じた」という感想が、部署間や立場を超えた交流を生む可能性があります。

結論:パースペクティブが描く多層的な会社像

 「パースペクティブ」を活かした社内報は、組織全体の姿を多層的に描くことができます。経営層、現場、顧客、さらには時間や文化というさまざまな視点を組み合わせることで、社員に新たな気づきを提供し、組織全体の一体感を高めることができます。

 社内報に、ぜひこの「パースペクティブ」を意識し、多様な視点を取り入れてみてください。それぞれの視点が、読者に新しい発見をもたらし、会社の未来を明るくする力になるはずです。