編集後記が会社の空気をつくる〜岡山の中小企業こそ活かしたい「編集者の声」の力〜

 社内報の最後に載っている「編集後記」。
多くの会社では、あまり重要視されていないかもしれません。

「最後の余白に入れる短いコメント」
「とりあえず誰かが書いておくもの」

そんな扱いになっているケースも少なくありません。

しかし、実際の現場を見ていると、編集後記こそが、社内報の“空気”を決めていると感じることがあります。

編集後記は、自由に語れる場所

 編集後記の特徴は、その号の企画や内容に縛られず、編集者自身の視点で感じたことを書ける点にあります。

もちろん誌面の内容に触れても構いませんが、必ずしもそれに沿う必要はありません。例えば、ある会社では、社長自らが編集後記を書いています。その内容が、学生時代に自分の容姿をいじられていた「ニックネーム」に関する自虐ネタでした。

 社内報という公式な配布物でありながら、まるで仲間内で話すような話題を載せることができる。それが編集後記というスペースの面白さです。

岡山の企業には、言葉になっていない空気がある

 岡山の中小企業を取材していると、共通して感じることがあります。

それは、人間関係の近さです。

  • 社長の若い頃を知っている社員がいる
  • 親子二代で働いている人がいる
  • 家族ぐるみの付き合いがある
  • 地域の仕事を支えている誇りがある

 こうした関係性は、大手企業にはなかなか真似できないものです。しかし、その空気は、ほとんど言葉にされていません。社員にとっては当たり前すぎて語られず、外から見れば分からないままになっています。その「言葉になっていない空気」を、さりげなく伝える場所が、編集後記です。

編集後記は「会社公認のSNS投稿」

 編集後記の王道の使い方は、編集者の日常や地域での出来事を綴ることです。

たとえば、

「銀行主催の県内企業対抗リレーマラソンに参加してきました」
「地元のお祭りの応援に行ってきました」
「清水白桃の季節ですね。もう食べましたか?」
「実は、うちの実家の地域では冬に鮒を食べるんです」

そんな、岡山で暮らしているからこそ出てくる話題です。

すると、

「うちもリレーマラソン出ましたよ」
「そのお祭り、毎年行ってます」
「白桃、今年はまだ食べてないなあ」

といった会話が、現場で自然と生まれます。仕事の話ではなく、同じ地域で暮らしている人同士の会話です。これは構造的に見ると、SNSの投稿とよく似ています。

  • 今日こんなことがあった
  • こんな場所に行ってきた
  • こんな季節になりましたね

 こうした日常の共有が、親近感や共感を生むのです。編集後記は、言ってみれば「会社公認のSNS投稿」のようなものです。

なぜ編集後記は、こんなに効くのか

 編集後記が社内の空気を変えるのには、いくつかの理論的な理由があります。

① 自己開示が距離を縮める

 心理学では、自分のことを話すと相手との距離が縮まる「自己開示効果」が知られています。

「子どもの運動会に行ってきました」

この一言だけで、

「うちも来週なんです」
「同じ学校ですよ」

という会話が生まれます。

編集後記は、会社の中で唯一、

  • 業務ではない話
  • 個人的な感想
  • 日常の出来事

を公式に共有できる場所です。つまり、会社公認の自己開示スペースなのです。

② ジョハリの窓で見る編集後記の効果

 人間関係には「ジョハリの窓」という考え方があります。

人には、

  • 自分も他人も知っている部分
  • 自分だけが知っている部分

があります。
編集後記で日常の話が共有されると、これまで知られていなかった一面が見えてきます。

すると、

「この人、こんな一面があったんだ」

という理解が生まれ、心理的な距離が縮まります。この小さな理解の積み重ねが、社内の一体感をつくっていくのです。

③ 小さな物語が共感を生む

人は、

  • 数字
  • 理念
  • 指示

よりも、物語に強く反応する生き物です。

編集後記は、

  • 日常の出来事
  • 個人的な感想
  • 地域の話題

という、小さな物語の集まりです。その積み重ねが、「この会社、なんだか温かいな」という空気をつくります。

岡山の企業ほど、編集後記が効く理由

岡山の企業には、

  • 同じ地域に住んでいる人が多い
  • 子どもの学校が同じ
  • 地元の行事を共有している
  • 農産物や季節の話題が共通している

という特徴があります。つまり、SNS的な共通話題が多い地域なのです。だからこそ、

「白桃の季節ですね」
「リレーマラソンに出てきました」

という一言が、社内の共通体験を思い出させるスイッチになります。

社内報の最後に、「人の声」を置く

社内報には、

  • 理念
  • 取り組み
  • インタビュー
  • 実績

といった内容が並びます。

しかし、その最後に編集者の一言があるかどうかで、誌面の印象は大きく変わります。編集後記は、「会社は人でできている」ということを、さりげなく伝える場所なのです。

岡山の企業こそ、編集後記を大切に

 地域の中小企業は、都会の企業とは少し事情が違います。都会の企業では、社員の出身地がバラバラで、その多様性が面白さになることもあります。

 一方で、地域の中小企業では、社員の多くが同じ地域に住み、同じ生活圏で暮らしています。同じ学区の子どもがいたり、同じスーパーに通っていたり、同じ祭りに参加していたりする。そうしたローカルな共通体験が、自然と人と人の距離を縮めていきます。

 都会の企業の魅力が「多様性」だとすれば、地域の企業の魅力は、ローカル性から生まれる共感にあります。だからこそ、地域ネタの編集後記には、都会の企業には出せない効果があります。

地域ネタの編集後記がもたらす4つの効果

① 共通の話題が生まれ、雑談が増える

岡山の企業では、

  • 同じ学区の子どもがいる
  • 同じスーパーを使っている
  • 同じ祭りに参加している
  • 同じ季節の農産物を食べている

といった、生活圏の共通点が多くあります。

「清水白桃、今年はもう食べました?」

そんな一言があるだけで、

「昨日食べましたよ」
「まだなんですよ、高くて」

という雑談が自然に生まれます。雑談は、一見すると仕事に関係のない会話ですが、人間関係の潤滑油としては非常に重要です。

② 「同じ地域の仲間」という感覚が生まれる

会社の中では、

  • 部署
  • 年齢
  • 役職
  • 勤続年数

といった違いがあります。しかし、

「同じ町に住んでいる」
「同じ祭りに行っている」
「同じ桃を食べている」

という話題は、立場を越えた共通点になります。

仕事の関係ではなく、「同じ地域で暮らす人同士」という、もう一つのつながりが生まれるのです。

③ 新しく入った人の「土地勘」を育てる

中途採用や若手社員の中には、

  • 県外出身
  • 他地域からの転勤
  • 地元でも別のエリア出身

という人もいます。そうした人にとって、地域ネタの編集後記は、

  • 岡山の季節感
  • 地元の行事
  • 地域の文化

を知るきっかけになります。つまり編集後記は、小さな地域ガイドの役割も果たします。結果として、「この地域に馴染んできたな」という感覚が育ち、定着にもつながっていきます。

④ 「この会社は地元の会社だ」という実感を生む

 地域の話題が自然に出てくる社内報は、「この会社、ちゃんと地元で生きている会社だな」という印象をつくります。これは特に、

  • パート・アルバイト
  • 若手社員
  • 地元出身者

にとっては大きな安心感になります。

大手企業では、

  • 全国共通の制度
  • 本社主導の方針
  • 無機質な情報

が中心になることが多く、地域の空気が見えにくい場合もあります。だからこそ、「うちの地域の話が出てくる会社」というのは、中小企業ならではの強みになります。

このように、中小企業には地方ならではの、大手には真似できない物語があります。その物語は、大きな特集記事だけでなく、編集後記のような小さな文章にも表れます。社内報の最後にある、たった数行の文章。しかしその一文が、「この会社、なんかいいな」という空気をつくることもあるのです。

編集後記は、単なる締めくくりではありません。それは、会社の物語をにじませる、小さな窓なのです。

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