社員の物語に耳を澄ませて〜“翻訳家”としてのまなざしで、組織の空気を育てる社内報〜
言葉に、耳を澄ますということ
誰かの語った言葉に、「ああ、わかるなあ」と感じたことはありませんか?
その一言が、思いがけず自分の気持ちにぴったりと重なり、そっと背中を押してくれるような──
そんな経験が、誰にでも一度はあるのではないでしょうか。
社内報が果たす本当の役割は、まさにそこにあります。社員一人ひとりが語る日々の体験や、ふと漏れた本音を、ただの“情報”としてではなく、“物語”として丁寧に受け止め、誰かの心に届くように届けること。それは、社員の声を拾い上げ、言葉にそっと手を添え、希望や誇りへと育てる静かな営みです。
この記事では、社内報担当者が“翻訳家”として、社員の語りにどのように向き合い、組織にどんな価値を届けていけるのか──その視点と技術を、丁寧に紐解いていきます。

社内報の本質は、語りを育てること
社内報というと、会社の情報を伝えるための媒体だと捉えられがちです。もちろん、その役割は大切ですが、それ以上に社内報には、“社員の物語を育て、届ける”という深い可能性があります。
日々の仕事の中には、誰にも語られていない経験や、言葉にならない感情が数多くあります。それらを丁寧に受け止め、言葉として紡ぎ、組織に届けることで、空気が少しずつやわらかく、あたたかく変化していきます。その役割を担っているのが、社内報の担当者であり、社員一人ひとりの語りをそっと整える“翻訳家”なのです。
翻訳家としてのまなざし
翻訳家としてまず大切なのは、社員の語る言葉の“背景”を感じ取る力です。
たとえば、「最近はしんどいです」と語る一言の背後には、納期に追われている現場の緊張感や、自分なりに役に立ちたいという静かな責任感が隠れているかもしれません。表面の言葉に引きずられず、その人が何を大切にしているのか、どんな状況で語ったのかを想像することが出発点です。
次に必要なのは、語られた言葉を希望のあるメッセージへと再構成する力です。ただ取り繕ったり、美しく飾るのではなく、その人の視点や価値観を損なうことなく、意味づけを少し変えるだけで、語りがぐっと前向きになります。失敗談も、努力の過程も、少しの視点の変化で「気づきの物語」として息づかせることができます。
そして最後に求められるのは、その語りを誰かに届けるための表現力です。その人らしさを保ちつつ、読み手にとっても「自分のことのように感じられる」言葉に整える。それができて初めて、語りは社内の共感を生み、共有され、文化となっていきます。
語りを受け止めるということ
では、実際に社員の語りを引き出すにはどうすればよいのでしょうか。
それは、質問のうまさではなく、「受け止める姿勢」があるかどうかにかかっています。
取材では、いきなり核心を突くよりも、「最近どんな仕事をしていますか?」とか「ちょっと印象に残っている出来事ってありますか?」というような自然な問いから始めるとよいでしょう。語り手が自分の言葉で話し始めたとき、その経験がどんな意味を持っていたのか、どんな気持ちだったのかを、ゆっくりたずねてみてください。
「正直、やっても報われない気がします」と言われたとき、その言葉を否定するのではなく、「そう感じたのは、どんな背景があったのですか?」と問い返すだけで、本人の中にある“大切にしていること”が見えてくることもあります。
ネガティブな語りを、希望の言葉へ
社員が話す本音には、時に不満や戸惑いも含まれます。しかし、その中には、よりよくしたいという想いが含まれていることがほとんどです。それを「明るい言葉」に言い換えるのではなく、「意味を再発見する言葉」へと編み直すことが、私たちの役割です。
「同じ作業ばかりで飽きてきました」という言葉は、「自分なりに工夫できる余地を探しています」というメッセージに変えることができますし、「誰も見ていない気がする」という寂しさは、「見えにくい仕事でも、支えているという誇りがある」という言葉へと育てられます。
こうした編集を重ねることで、社員自身も自分の経験の価値を再確認し、読み手にも前向きな気づきを与える“語りの連鎖”が生まれていくのです。
翻訳家として大切にしたい姿勢
語り手と向き合うとき、社内報の担当者には一つの姿勢が求められます。それは、語りを“整える人”である前に、“そばにいる人”であるということです。
評価せず、急かさず、沈黙にも意味を見出す。話してくれたことに対して「話してよかった」と思ってもらえるように関わる。その人の言葉の奥にある大切な感情を尊重しながら、言葉を編み直す。
この姿勢こそが、社内報における“翻訳家”の根幹であり、組織全体に対するまなざしでもあります。
社内報が生み出す“語りの循環”
誰かが本音を語ったとき、それが真摯に受け止められると、別の誰かもまた、自分の想いを語り始めます。その連鎖が起きるとき、組織には静かに、けれど確かな変化が訪れます。
新人が語った不安な思いが、先輩社員の支援意識を呼び覚まし、現場スタッフの地道な努力が、管理部門に感謝のまなざしを生む。そんなふうに語りが繋がっていくことで、社内の空気は少しずつやわらかく、健やかになっていくのです。
語りのそばに立つということ
社内報の編集は、情報整理ではありません。それは、社員一人ひとりの人生の断片にそっと立ち会い、その物語を組織の未来へとつなぐ仕事です。
あなたが今日受け取った語りが、その人にとって「語ってよかった」と思える体験となり、誰かにとって「読んでよかった」と思える気づきになれば、それは、社内報にしかできない、かけがえのない貢献となるでしょう。
語りのそばに立ち、言葉に手を添えながら、今日もまた一つ、社内の物語を紡いでいきましょう。
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