『肌で感じ取る』会社の実態:表面的な言葉の裏にある本音を見抜く社内報担当者の感覚

 社内報担当者に求められるスキルは、単に取材をして記事をまとめるだけではありません。取材対象者が語る言葉の背後にある、本音や感情、組織の雰囲気を「肌で感じ取る」感覚が必要です。時には、取材対象者が口にする言葉よりも、その場で感じ取る微妙なニュアンスや雰囲気が、会社の実態を的確に反映していることがあります。こうした感覚を磨くことは、社内報担当者にとって重要なスキルであり、組織の本当の姿を浮き彫りにする手段となります。

1. 言葉以上に語る雰囲気や態度の観察

 取材時に、社員が発する言葉とその言葉に込められた感情や雰囲気には違いが生じることが多々あります。たとえば、前向きな言葉を口にしながらも、表情が固かったり、会話がぎこちなかったりする場合、表面的にはポジティブなことを語っていても、内心では何かしらの葛藤や不安を抱えていることが読み取れます。

ポイント

  • 非言語コミュニケーションの重要性:取材時に大切なのは、言葉以外の要素、つまり表情や視線、声のトーンなどを細かく観察することです。例えば、複雑なテーマに関して説明を避けるような態度や、特定の話題になると表情が曇る瞬間など、こうした非言語のサインは、取材対象者が口にしない「本音」を伝えていることが多いものです。
  • 緊張感や安堵感の変化を捉える:取材を進める中で、特定の質問に対して緊張感が高まる場合や、逆に質問を終えた後にホッとした表情を見せる瞬間など、感情の変化を捉えることは重要です。社員が何にストレスを感じているのか、どの部分に満足感や自信を持っているのかを「肌で感じ取る」ことで、言葉にできない内部の状況が浮かび上がります。

2. 現場の空気感を読み取る力

 社内報担当者が現場に出向いて取材を行う際、その場の空気感を読み取ることも大きな情報源です。現場に漂う雰囲気は、書類やデータだけでは把握できない、組織の活気や士気を表しています。現場でのコミュニケーションのあり方、作業中の社員同士のやり取りなど、日常的な「当たり前」に隠れたヒントを見逃さないことが重要です。

ポイント

  • チームワークの強弱を肌で感じ取る:現場を歩く中で、社員同士のやり取りや協力の仕方を見ると、チームワークがどれほど強固なのかが感じ取れます。声を掛け合いながら円滑に進む現場もあれば、無言で淡々と仕事をこなしている現場もあります。後者の場合、チーム間の連携不足やコミュニケーションの希薄さが課題となっている可能性があり、その問題を浮き彫りにする視点が重要です。
  • 仕事の進捗感を感じる:現場を訪れると、仕事がスムーズに進んでいるか、あるいは何らかの停滞感やストレスが存在しているかが、空気感から感じ取れることがあります。書類や報告書には現れない「肌で感じ取る」現場の雰囲気を観察することで、組織全体の進捗状況や問題点を把握することができます。

3. 取材対象者のストーリーの裏側にある文脈を読む

 取材を進める中で、社員が語るストーリーの裏には、必ずその人特有の文脈や背景が存在します。表面的な言葉だけではなく、何を強調し、何を避けようとしているのかを読み取ることで、取材対象者が抱えている本音や、組織全体の流れを理解することができます。

ポイント

  • 話の流れに注目する:インタビューの中で、取材対象者が何を語りたがり、どの部分を省略するのかに注目します。たとえば、成功事例を強調する反面、失敗に関する話題を避ける場合、裏には組織内での不安やプレッシャーが隠れていることが考えられます。このような語られない部分こそ、社内報担当者が補完して記事として表現するべき要素です。
  • 反復して使われるキーワードに注意する:取材対象者が繰り返し使う言葉やフレーズは、彼らが意識している問題や関心事を反映しています。例えば、「忙しい」「効率化」「コミュニケーション」といったキーワードが頻繁に出てくる場合、それが組織全体の課題やニーズを反映している可能性があります。これらの言葉を深掘りして記事化することで、会社全体の改善に貢献できるインサイトを提供することができます。

4. 経営層と現場の温度差を「感じる」ことの大切さ

 社内報担当者は、経営層のビジョンと現場の実情をつなぐ役割も果たしています。経営層が発するメッセージと、現場の社員が感じていることの間にどれだけのギャップがあるのかを肌で感じることで、組織全体の課題を浮き彫りにすることができます。

ポイント

  • 経営層の言葉に対する現場の反応を観察する:経営層が語る目標や方針が現場でどう受け止められているのかを観察します。取材中に経営層のビジョンに対するポジティブな反応があれば、現場と経営層の方向性が一致していることを示しますが、言葉には出なくても、反応が鈍かったり、懐疑的な空気が漂う場合は、現場での不満や誤解が潜んでいる可能性があります。
  • 現場での成功事例や課題を拾い上げる:現場で語られる成功事例や課題を、経営層にフィードバックする役割も社内報担当者に求められます。取材を通じて、社員が誇りを持っている部分や、改善を求めている部分を感じ取り、経営層に伝えることで、現場と経営層の距離を縮めることが可能です。

まとめ:『肌で感じ取る』力を持つ社内報担当者の価値

 社内報担当者は、取材対象者が語る言葉だけでなく、言葉の背後にある感情や雰囲気、さらには現場の空気感を肌で感じ取り、それを記事に反映させる役割を担っています。この「肌で感じ取る」力は、組織の本当の姿を浮かび上がらせ、経営層や全社員にとって重要な気づきを提供するために不可欠なスキルです。

 取材を通じて感じ取った微妙なニュアンスや空気感を見逃さず、記事として表現することで、社内報は単なる情報発信ツールを超え、組織全体の課題解決や結束力の向上に貢献する強力なツールとなるのです。

 「肌で感じ取る」という感覚は、社内報担当者が培うべき最も重要なスキルの一つです。このスキルを駆使することで、表面的な言葉だけでは捉えきれない会社の真の姿を描き出すことができ、社内報が経営と現場をつなぐ重要なツールとして、組織全体に価値を提供できるのです。