組織は「5-15-50-150-500の法則」で考える

 一人の人間が社会生活を行う上で、人間関係を円滑に保てる人数はどのくらいかご存知でしょうか?

およそ150人と言われています。
(〜250人と言われることもありますが…)

 割と有名な話なので、聞いたことはあると思います。これはダンバー数という数字で、人間が安定的な社会関係を維持できる人数の認知的な上限とされている数です。今回はこのダンバー数について考えてみました。

ダンバー数とは…

 ダンバー数(ダンバーすう、英: Dunbar’s number)とは、人間が安定的な社会関係を維持できるとされる人数の認知的な上限である。ここでいう関係とは、ある個人が、各人の事を知っていて、さらに、各人がお互いにどのような関係にあるのかをも知っている、というものを指す。 ダンバー数は、1990年代に、イギリスの人類学者であるロビン・ダンバーによって初めて提案された。彼は、霊長類の脳の大きさと平均的な群れの大きさとの間に相関関係を見出した。ダンバーは、平均的な人間の脳の大きさを計算し、霊長類の結果から推定する事によって、人間が円滑に安定して維持できる関係は150人程度であると提案した。(Wikipedia引用)

Wikipediaより引用

 ダンバーは、民俗学的研究をもとに様々なグループを研究する中で、何度も同じ規模の集団が繰り返し登場することに気がつき、それを「親密さの集まり」と称して、規模に応じて下記のように分類しています。

  • 5~9人=「社会集団(クリーク)」…最も親しい友人やパートナーの数
  • 12~15人=「シンパシー・グループ」…ほぼどのような状況下でも心から信頼できる人の数
  • 30~50人=「一団(バンド)」…危険な国を安全に往来できる小さな団体
  • 150人=「フレンドシップ・グループ」…共同体の中で一緒に暮らすのに最適な人数
  • 500人=「部族・種族(トライブ)」…出会うと会釈する程度の顔見知りの人数
  • 1,500人=「共同体(コミュニティ)」…人間の長期記憶の情報数の限界、頭の中で名前と顔が一致する人数

「5-15-50-150-500の法則」

 最初の5人は、精神的な支えになってくれたり、困ったときに助けてくれたりする人数で、家族などに近い繋がり。次の15人は、シンパシー・グループと呼ばれる人たちのことで、家族や親友ではないが、その人が亡くなるとひどく悲しむような人たちのこと。次の50人は、比較的頻繁にコミュニケーションを取る(取れる)人達。そして150人というのが、ダンバーの言う、一人ひとりの顔を覚えていて、名前と顔がしっかり一致できる限界の数字。その上の500人と言うのは弱いつながりと言われる人の数で、会ったことはあるが、それほど親しくない人の数。最後の1,500人は、今まで生きてきた中で出会った人たちで、記憶に留めている人数の限界とされている人数です。
 
 facebookなどで友達の数が「500人超えた!」とか「俺は1,000人だ!」などと競う風潮が一時期流行りましたが、おそらく、そのなかの大半は名前を認知している程度で、友達というほどのコミュニケーションは取れていないと思います。逆にネットのなかであれ、良好な関係性を維持していくのであれば、やはり150人が限界ではないかと思います。

ダンバー数を組織作りに生かす

 ダンバー数では、150人を超えるとグループの団結と安定を維持するために、より拘束性のある規則や法規や強制的なノルマが必要になると考えられています。組織における統制範囲については専門家が色々と研究しており、一人で管理できる人数は4人から6人とされています。これは自衛隊の部隊編成でも同様で、大隊、中隊、小隊、分隊、班と細分化された最小単位の班は、4~6人で構成されています。

 組織論の中でも、社員数が150人を超えたら社長が社員を把握することは不可能であるとも言われ出しました。活性化された組織という面からすると、50人というのが適切な人数であると思います。50人程度であれば、頻繁にコミュニケーションを取るのは比較的できそうです。50人を超えると、事業部的な組織運営を考えると良いかもしれません。また50人以上の企業では、コミュニケーションを補強したり、活性化させたりする何らかのツールや仕組みが必要になるでしょう。個人的には50人を超えた時点で社内報を発行することをお勧めします。そして、100人を超えたら社内報を発行するのは必須です。とにかく何かしらの社内広報を定期的に行う必要があります。150人までは、同僚の活躍や仕事内容を把握できると思いますが、それを超えると意思疎通ができる限界を超えるでしょう。それこそ、「あの人は何をやっているの?」的な感覚が出てくると思います。人の数で考えると、150人あたりが分社化の分岐点だとも言えます。

組織の最小単位を5人にすると協調行動を促しやすい

 5人程度でチームを編成すると、協調行動も取りやすくなります。協調を促進するためには6つの要素を満たさなければなりません。「自分以外との接点」「頻繁なコミュニケーション」「見える化された状態」「信頼される関わり方」「価値観の共有」「競争しても得しない状況(ゴールの共有)」の6つです。小さな人数で編成されたチームでは、これらの要素を満たしやすいのです。特に「信頼される関わり方」では、役割の明確化やコミットメントの度合いが重要ですが、実は、関わり方が上手くてきているかどうかでモチベーションが大きく変わります。チームへの貢献ができているような関わり方をしているかどうかです。それができていれば、自己肯定感や自己効力感を感じられ、モチベーションが高くなります。人数が増えてくると、周りに埋もれてしまう人が出てきたり、自分の貢献を感じにくくなったりします。

ダンバー数を超えたとしても結束力のある組織は作れる

 ダンバー数を意識しながら、組織をデザインすれば良いのですが、ダンバー数を超える人数であっても、結束力があったり、協調性が高かったりする組織づくりは可能です。それに必要なのが、志や理念、そして社風です。
 志や理念は、そこに属する社員のみなさんが、心から共感することが前提になります。しかし、社風であれば、意識するしないに関わらず、その組織に属するメンバーに刷り込まれた文化です。社風の本質というのは「虚構」です。虚構であるからこそ社風は作れるのです。つまり、ダンバー数を超える組織を上手く回すには社風を作れば良いということなのです。

 また、個人的には、組織は感情で動いていると考えています。社風と感情の関係など、その辺りについても別の機会に記事をアップしたいと考えていますので、ご興味がありましたら、読みにきてください。