「社風とは“意図的”につくるものである」

なぜそうしないといけないか

社風は、社内に対して様々な影響力を持っていて重要である。ほとんどの経営者はそう思われているでしょう。でも、なぜか重要であるはずの社風を積極的に学び、良い社風にしようと動かれている経営者はあまりいません。
多くの方が、時間がかかる。費用対効果が見えない(社風を変えるのに費やすコストは?社風を変えたからといって、それが利益につながるのか?)。良い社風のつくり方がわからない。そもそも社風をつくることなんてできないのでは…と思われています。
しかし、好業績をあげている会社のほとんどは、良い社風を持っています。なぜでしょうか?良い業績を上げているから良い社風になるのでしょうか。いえ、そうではありません。実は良い社風を意図的に作っているから、好業績を上げている会社には良い社風があるのです。


私たちパッションでは、社風とは意図的につくるものである、と考えています。いえ、意図的に作らなければならないとさえ思っています。
なぜなら、社風が一番大きく影響するところというのは、社員のモチベーションと協調性に関わる部分だからです。

つまり、社風は動機付けだから、意図的につくるものであり、社風は思い込みだから、意図的につくるものであり、社風は虚構だから、意図的につくるものなのです。

社風とは『虚構』である。

虚構を辞書で調べると…
・事実でないことを事実らしく作り上げること。また、作り上げられたもの。作りごと。
・文芸作品を書くにあたって、作者の想像力により、実際にはないことを現実にあったことのように真実味をもたせて書くこと。また、その作品。仮構。フィクション。

社風というのは、みんなが、それに共感するからこそ、それを信じて社風になるのです。
みんなが、それに共感しないと虚構である社風は機能しません。いかにみんなが共感し信じるか…そう思わせるように持っていくことがポイントです。
例えば、「フランクで風通しが良い社風」というものがあったとした場合、しかし、実際には「フランクで風通しが良い社風」なんていうものは存在しません。存在しているのは、ある日に、社長がたわいも無い話をしながら一緒に作業をしてくれた。また、別の日に、部長に悩みを相談したら親身になってアドバイスしてくれた…という事実が複数回あっただけで、事実としての社風というのは存在しません。
これが真相です。社長と一緒に作業した社員や部長に相談に乗ってもらった社員だけが経験したことであり、他の社員は経験していません。しかし、この経験を社員が語り始め、それが周りに広がり、みんながその話を信じた時に虚構としての社風が成り立つことになるのです。

景気の構造も同じ

これは景気の構造と同じです。景気というのは実際には存在しません。存在しているのは、物が売れたとか、設備投資が行われたとか、給与が増えたとか、という事実です。この事実が繰り返し行われた時、日銀短観のアンケートなどにその事実が反映され、『景気が回復した』などの判断が公表されます。その公表によって、社会の人々が「景気が良くなった」と思っているだけなのです。つまり、「景気が良くなった」という日銀の言葉(虚構)を、みんなが信じただけのことで、誰も、景気が良くなったという事実は見ていないのです。景気が良くなったという事実なんてないのですから。ここがミソで、公の機関から景気が良くなったと聞かされると、社会の人たちは、景気が良くなったように錯覚してそのように振舞い始める。つまり消費活動が活発になる。そこから善循環して、さらに物が売れ始めたり、売上を伸ばす企業が増えたり…ということにつながる。ポイントは公の機関が『そう言った』ということ。

「社風」をつくっていく

社風にも同じことが言えます。「フランクで風通しの良い社風」と信じた組織のメンバーはそれぞれが、そのように錯覚して振舞い始めます。これは経営層も例外ではありません。組織のメンバーがそのように振舞えば振る舞うほど、善循環されていき、社風として、みんなに信じられるようになります。これが社風の正体です。
ただ、景気のように政府のような公の機関がない企業では、「フランクで風通しの良い社風」と同じような言葉を、社員が誰からともなく同時多発的に言い始めることで、みんなが信じ始めていきます。逆に経営層がうちの社風は…と言わない方が良いのです。景気に関しては、政府と国民の間での利害関係が直接的には存在しないため、政府に近いところからの言葉でも大丈夫なのですが、社風については、社員の方から語らせる必要があります。なぜなら、雇用する側(経営側)と雇用される側には利害関係があるからです。ですから、何か裏があるのではないかと勘ぐられてしまうのです。
つまり、 社員に語らせるための「場」や「キッカケ」が必要であり、それを活用して、『社風』という虚構をつくらなければならないわけです。そうした「場」や「キッカケ」に最適なのが『社内報』というツールなのです。

社風の可視化

社風の可視化には言葉が重要な役割を果たします。既にある社風を可視化するには、社内報が有効です。社員紹介のようなコンテンツを作り、個別に取材を行うことで会社に対する想いやイメージ、また、どういう風に社風を感じているかをヒアリングします。


社内報で紹介された社員の言葉は、社内報を読んだ社員の記憶に残ります。そして、それを読んだ社員が取材された時には、以前紹介されていた社員の言葉が思い起こされます。「以前の記事で○○さんも言われていたましたが、私もうちの社風はこうだと思います」という言葉が頻繁に聞かれるようになります。その時に、具体的に、どんな時にそう感じたかをヒアリングすると、以前の方とは微妙に違う感じ方をしていることがわかります。イメージで表すと上の図のような感じです

社風の感じ方には社員それぞれに幅と濃淡がある。

社員の方々が、社風を感じる機会はそれぞれシーンが異なります。そのため、同じ意味でも異なる言葉で表現されたり、その意味に幅があったり、その社風をそこまで強く感じていなかったりなど、まちまちです。社風を可視化するには、それらの異なる言葉で表現された同じような意味の言葉や、意味の幅、感じ方の強弱(濃淡)を包含する一つ上の概念の言葉や、少し抽象化した言葉を選んでフィードバックします。つまり、社員が感じている幅や強弱があるいくつもの社風を表す言葉の、ほぼ全てを言い含めてしまうような言葉にして、多くの社員が共感し納得できる言葉として表現します。ポイントは具体的すぎないことと、抽象度が高い場合には、前提となる言葉をさりげなく入れることです。

同じ会社の中で正反対の社風が共存することはまず無い

また、社風についてのヒアリングを行う上で、複数の社員の語る言葉と正反対の意味を持つ言葉が出てきた場合、それは社風ではなく、何らかの条件の時に下された判断や選択された行動が、あたかも社風と勘違いされたものである場合が高いのです。もしくは、個人的に偏った考え方を持つ方だったり、または思い込みや偏見などのバイアスがかかっていたりする場合が考えられます。ほとんどの場合というか、同じ会社の中で正反対の社風が共存するということは、まずあり得ません。いやあっても表面には出てきません。(ある条件下で、社風とは正反対の判断が下され、そういうことが複数回発生し印象に残っていた…というのは別ですが。)

社風の可視化は言葉をいかに収斂させるかがポイント

 「収斂(しゅうれん)」あまり使われない言葉なので、聞きなれないかもしれません。この収斂という言葉が、社風を可視化していくプロセスをぴったりと言い表していると、私は感じています。収斂という言葉を辞書で引くと次のように出ています。

「収斂(しゅうれん)」

1、縮むこと。引き締まること。また、縮めること。収縮。「血管を収斂させる」
2、一つにまとまること。また、まとめること。集約。「意見が収斂される」
3、租税などを取り立てること。
4、生物学で、系統の異なる生物どうしが、近似した形質をもつ方向へと進化する現象。  相近。「収束2・3」の旧称。

似たような意味の異なる言葉を包含していく過程では、抽象度を上げるということを話しました。抽象度を上げるとはどう言うことかというと、集約させる、まとめるということです。しかし、ただ集約させたりまとめたりというのではなく、社風としてまとめるということは、社員のみんなが同じように感じる部分を輪郭としてはっきりと認識でき、さらに拡張したり変な解釈をしたりしなくても幅を持たせた意味合いを認識できることだと思います。そのためには、みんなが共感できる言葉と、その言葉に前提となる言葉を添えることが必要となります。

「社内報」社員へのインタビューが最適!

「みんなが共感できる言葉への収斂」には、社風を語る社員のインタビュー記事が一番適しているのです。だからこそ、社風の可視化には社内報が有効だと言えるのです。

抽象的に捉えると、見えないものを見ることができるようになります。社風を捉え可視化するというプロセスには、この抽象化の概念が非常に大切です。分類せず抽象的なままにしておく事で、より多くの情報を含ませておく事ができるのです。情報の圧縮とも言えます。これが抽象化という思考であり、「見えないものを見る力」であり、「一から十を知る力」でもあります。
 新入社員に社風が伝播し浸透する時には、見えないものの存在を感じさせる言葉、また、先にある十の言葉をすんなりと理解できる一つの言葉が適しています。それが抽象化された言葉「社風」なのです。

「社風の可視化」のもう一つの大切な意味

言葉を収斂させるプロセスで、イノベーションの源泉ともいうべき、「多様性」を持った組織作りに必要な環境を作ることができる。

先に紹介した収斂という言葉の意味の4番目を見てください。「4 生物学で、系統の異なる生物どうしが、近似した形質をもつ方向へと進化する現象。相近。」とあります。これは正しく、イノベーションの源泉ともいうべき、多様性を持った組織作りに必要な環境だと考えられます。つまり、社風という、社員が感じているものが、多様な資質を持つ人材を一つの形質(考え方や行動)を持つ方向へ進化するようにできるという事です。多くの企業で、単に多様な人を寄せ集めれば多様性だと勘違いされていますが、本質は違います。多様性の本質は、それぞれの価値観や個性、資質を尊重し、受容し高め合いながら混じり合い、その状況や文化や精神性の在り方を伴うものが本来の多様性です。社風にはこのような多様な資質をまとめ、一つの方向性へと向かわせる力があると、私は考えています。

社風の構造

「企業文化」+「企業風土」=「社風」

組織文化と企業文化の違い。組織文化は部署ごとの文化であり、企業文化は組織文化が集まって企業としてみた場合の文化です。つまり企業の中には複数の組織文化があるということです。組織風土と企業風土も同様です。

企業風土とは…

社員の人間関係の中で形成される「組織において共通の認識とされる、独自の規則や価値観など」。組織に所属する人が明確に、あるいは間接的に感じている、表面化された価値観のことです。組織内に所属している人間から醸し出される雰囲気で、従業員の考え方や行動、感情などに影響を及ぼします。これは自然に生まれ、世代を超えて継承され、めったに変化することはありません。

企業文化とは…

そこで働く社員間で共有されている「文化」であり、経営理念や行動規範などをベースに意識的・無意識的に作り出されるものです。集団が特定のものを強く信じ、それに基づき集団的判断・行動・学習した結果が独自性を持ったアウトプットとなり、中長期で生み続けるもの。一言で言えば、「その集団が何を信じて行動しているか」≒企業文化。これは虚構であり想像上の現実です。

企業文化を作り上げるものは、創業者の想い、経営理念、行動規範、業種・業界の常識や慣習、内部戦略(人事考課制度・インセンティブ)、就業規則、社内行事、組織形態、明文化されたルール、明文化されていないルール、暗黙の了解など。企業文化は外部からの影響を受け変化する可能性があり、また自ら変化させることが可能です。

社風は自然発生的にできコントロールできないものであるという考え方を捨て、社風はコントロールするものである、という考え方を入れてください。

中途採用が辞めた時、うちの社風に合わなかった(彼が合わなかった、相性が悪かった)…と言われることがありますが、そう捉えるのではなく、社風の方が彼を選ばなかった(社風の方に決定権がある)と捉えてみてください。社風が選んだ人物というのは、定着して馴染んでいきます。収斂していくのです。思考と行動のパターンが似てくる。(系統の異なる生物どうしが、近似した形質をもつ方向へと進化する現象。相近)。それは社風にとっても同じで、違う社風に触れてきた人物を入れることで、ちょっとだけアップデートします。それが社内に新しい風を吹き込むということです。
こう考えると、今までの視座・視点・視野が変わり、新しい観点で自社の社風を捉えてみようと思いませんか。意図的に作り込もうという意識を持って。
ぜひ、自社の社風について、今一度、深く考えてみてください。そしてまだ、社内報を発行していないのであれば、発行を検討してください。即効性はありませんが、漢方薬の如くじわじわと効き、根本的な社内体質の改善に結びつくことでしょう。

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