社内報インタビュアー養成道場、相手はAI。〜質問力を鍛える“仮想トレーナー”との対話記録〜
なぜ、社内報インタビューは難しいのか?
「うまく聞けた気がしないんですよね」
社内報インタビューを担当している中で、何度そう思ったかわかりません。相手の話は悪くない。でも、どこか浅い。どこを深掘りすればいいのかもわからず、毎回「もっといい聞き方があったのでは?」と反省ばかりでした。
そこにあったのは、自分自身の「質問力の限界」でした。どんなに良い話をしてくれる相手でも、問いの質が浅ければ返ってくる言葉もまた浅くなりがちです。そのうえで社内報は、“語りの背景や想いを取りこぼさず、他の社員に届ける”ことが使命です。つまり、表面的なやりとりでは、読者の心に届く記事にはなりません。
そこで、本記事では、AI(ChatGPT)に“仮想トレーナー”になってもらい、私自身が実践している「質問力を鍛えるトレーニング方法」をご紹介します。
質問が変われば、引き出せる言葉も変わる。
AIとの実話は、まさに“ひとり社内報道場”。誰でも、いつでも始められる、最近のお気に入りとなっています。是非、試してみたください。

- 0.1. なぜ「質問力」が社内報で重要なのか?
- 0.2. 聞き出せない悩みは、「質問の構造」と「自分の癖」にあった
- 0.3. AIを“質問トレーナー”にした実例
- 0.3.1. そして実際の課題……まずは1問チャレンジです
- 0.3.2. 【課題】この佐藤さんに「新人に伝えたいこと」をテーマにインタビューするとして・・・
- 0.4. AIとの対話で見えてきた、「良い問い」の正体
- 0.4.1. ① 質問は「事実」ではなく「意味」に向けて掘る
- 0.4.2. ② 「話しやすさ」と「深掘り」を両立する問いの構造
- 0.4.3. ③ ストーリー構造を意識した設計が鍵
- 0.5. AIが“最高の練習相手”である理由
- 0.6. 社内報インタビューは「翻訳」であり、「編集」でもある
- 0.7. 最後に:問いの質が、組織の関係性を変える
なぜ「質問力」が社内報で重要なのか?
社内報のインタビューは、一般的な広報やメディアの取材とは少し違います。
それは「人となり」を伝えること、そして「社風や価値観」を可視化するという目的があるからです。
たとえば、同じ話でも「何を聞くか」「どう聞くか」によって、その人が語るエピソードの意味がまったく違ったものになります。そして、多くの場合、社内報の読者は“その人をよく知っている”同僚たちです。曖昧な話や、借り物のような言葉はすぐに見抜かれます。だからこそ、「本人の言葉で語られる、その人らしい物語」を引き出すことが求められるのです。
そのための鍵となるのが、“質問力”です。その人の背景や想いを「引き出し」、さらに「翻訳し」、他の社員の心に届くように再構成する編集的な視点が求められます。
つまり、社内報インタビュアーは、“言葉の翻訳者”であり、“組織文化の伝達者”でもあるのです。
聞き出せない悩みは、「質問の構造」と「自分の癖」にあった
以前から私は、インタビュー時において、次のような傾向があることを感じていました。
- インタビュー前に質問項目はしっかり用意しているものの、その場での会話の流れに応じた“応用”が利かない
- 「良い言葉を引き出したい」という気持ちが先走り、つい自分の言葉で“助け舟”を出してしまう
その結果、返ってきた言葉が本当に取材対象者の言葉なのか、自分が誘導してしまったのか、曖昧になってしまう - 取材対象者の反応が遅かったり、沈黙が続いたときに、つい自分の意見や考えを挟んでしまい、言葉を“引き出す”というより“差し出してしまう”
こうした「やってしまいがちな癖」は、誰しも経験があるのではないでしょうか。私も例外ではなく、その場の空気をつなごうとして、“待つ”ことよりも“話す”ことを選んでしまう場面が何度もありました。
振り返ってみると、「問いの構造」だけでなく、「問いに向き合う自分自身のスタンス」こそが、インタビューの深さを左右していたのだと気づかされます。だからこそ、ただ「うまく質問する」以上に、「自分の癖や反応パターンを客観視し、鍛え直す」ことが重要だったのです。
その手助けとして、AIとのトレーニングが非常に役立ちました。
AIを“質問トレーナー”にした実例
AI(ChatGPT)とのトレーニングは下記のステップで進んでいきました。
ケース提示(ChatGPTから架空の事例を提示)
架空の人物 or 実在企業風の社員・経営者像を提示。その人のプロフィールと状況を簡潔に設定。
私がインタビュー質問を考える
ゴール:「読み手に伝えたい本質」や「読後感」を設定してもらう。質問項目を5〜10問作成(構成・順番も含む)
ChatGPTがフィードバック+模範例提示
質問の深さ・順序・切り口を添削。より深掘れる“問い直し”例なども提示。
私が再構成(必要に応じて)
修正・改善・別角度からの問い直し。
そして実際の課題……まずは1問チャレンジです
架空のインタビュー相手を設定し、トレーニングがスタート。
【設定】架空の社員プロフィール
名前:佐藤 真一(さとう・しんいち)
年齢:39歳
所属:製造部門・現場リーダー
勤続年数:16年目
特徴:入社当時は無口で、仕事を覚えるのが遅いと見られていた。
今では部下に信頼される頼れるリーダー。
昨年、自分の失敗体験を話す「新人向け研修」で好評を博す。
趣味は家庭菜園とDIY。「手を動かすことで心が整う」という。
上記の架空の社員プロフィールをもとに下記の課題に答えてください。そのあとで、私(ChatGPT)が「この質問の良い点/改善点」「深堀りの展開例」などをお伝えします。どうぞ、気軽に挑戦してみてください。
【課題】この佐藤さんに「新人に伝えたいこと」をテーマにインタビューするとして・・・
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「印象に残る、深掘り力のある質問を1問だけ」作ってください。
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「なぜ、佐藤さんはご自身の失敗体験を新人向け研修で話そうと思われたのですか?」
ChatGPT:素晴らしい切り口です!この質問は「なぜ話そうと思ったのか?」という動機の核心に迫っており、以下のような点で非常に優れています。
✅ この質問の優れているポイント
- 「行動」ではなく「動機」に焦点を当てている
「失敗を話しましたか?」ではなく、「なぜ話そうと思ったのか?」と問うことで、その背景にある価値観・哲学に触れることができます。 - 語りやすく、かつ本音が出やすい
自分の内面を振り返るタイプの質問であり、相手の語りやすいエピソードや感情に自然につながる導線です。
さらに深めるための「追い質問」案(インタビュースキル強化ポイント)
佐藤さんが「◯◯があったからです」と答えたあとに、以下のような“問い直し”を用意しておくと、より深い語りを引き出せます。
例:追い質問のバリエーション
「それを話すのは、勇気がいりませんでしたか?」
→ 心の葛藤やためらいを引き出す。
「新人にどんな気持ちを感じてほしかったのですか?」
→ 伝えたいメッセージの本質に迫る。
「ご自身の失敗を話すことで、何かご自身にも変化はありましたか?」
→ 語り手の成長・自己認識の変化を掘る。
「今思えば、あの時の“失敗”は、どんな意味を持っていたと思いますか?」
→ エピソードを“価値のある物語”に昇華。
▶︎ 次のお題
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「新人研修での語りの中で、特に反応が大きかった場面」を掘り出す質問を1つ考えてください。(つまり、「話した中で、特に印象的だった新人の反応」を引き出せる質問を1つお願いします。)
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「佐藤さんのお話の中で、新人が強く興味を惹かれたと感じられたのは、どの部分ですか? また、その理由は何だと思いますか?」
ChatGPT:はい!今回も非常に完成度の高い質問ですね。
✅ この質問の評価とフィードバック
◆ 良い点(◎)
- 「受け手の反応」に着目している
語り手(佐藤さん)の一方的な話ではなく、「新人がどの部分に反応したか」という相互作用に着目しているのが秀逸です。これにより、佐藤さんの「伝える力」や「相手を見る力」までも浮き彫りになります。 - 「なぜだと思うか?」の二段構え
「どの部分か」だけでなく、「その理由は?」まで聞いている点がとても良いです。
→これにより、相手が自分の語りの効果を言語化するきっかけになります。 - 自然な口調で聞きやすい
かしこまりすぎず、インタビュー現場で口にしても違和感のない、聞きやすい文体になっているのも好印象です。
🔁 さらなるレベルアップのための提案(プロ仕様)
この質問に少しストーリーのフックを加えると、より印象深くなることがあります。
🔸 例1:導入を付けて問いかける
「新人研修では、きっといろんな反応があったと思うんですが──」
「佐藤さんご自身が“あ、ここに食いついたな”と感じた場面って、ありましたか?」
→ 会話の流れの中で自然に入りやすく、相手も思い出しやすくなります。
🔸 例2:感情に寄り添うような問いにアレンジ
「一番印象に残った新人のリアクションって、どんなものでしたか?
それを見て、佐藤さんはどんな気持ちになりました?」
→ 相手の感情を引き出し、読者にとっても共感しやすいインタビューになります。
▶︎ 次のお題
-
「新人に伝えたい“これだけは忘れないでほしい”こと」というテーマで、新人に向けた“金言”や“本質的なアドバイス”を引き出す質問を1問、考えてみませんか? こちらも本質に迫る難しさがありますが、インタビュースキルが確実に上がるテーマです。
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「今、思えば、佐藤さんが『新人だった時に先輩からかけて貰っていれば!』と思う言葉はなんでしょうか?」
ChatGPT:お見事です。今回の問いも深く、味わいのある秀逸な一問です。
✅ この質問の評価とフィードバック
◆ 優れている点(◎)
- “過去の自分への問い”である
「今の立場から振り返って」という構造は、語り手の成長や内面を浮かび上がらせる力があります。単に「新人にアドバイスを」と聞くよりも、“過去の自分”という主語を設定することで、よりリアルな言葉が出やすいです。 - “言葉”という具体的な形で聞いている
「どんなアドバイスですか?」ではなく、「どんな言葉ですか?」と聞くことで、その人らしいフレーズが出やすくなります。社内報やインタビュー記事においては、見出しやリード文にも使える「印象的なひと言」が得られる確率が高まります。 - 語り手に共感しながら聞いている
「思えば」「かけて貰っていれば…」というフレーズが、佐藤さんの苦労や当時の孤独感に寄り添っている印象を与え、非常に聞き手としての成熟を感じさせます。
🔁 プロ的アドバイス:追加の“深掘り質問”例
この質問に続けて、こんな問いを挟むとさらに深みが増します。
「その言葉があったら、どう変わっていたと思いますか?」
→ もしその言葉をもらっていたらどう感じただろう?何が変わっただろう?という仮想の感情変化に踏み込める。
「だからこそ、今の新人にはどんな言葉をかけたいと思われますか?」
→ 自分の経験から得た学びを、後輩へのリアルなメッセージに変換する。
✍️記事にするときの使い方(応用)
「私自身が新人の頃、誰かに言ってほしかったのは──『◯◯◯』という一言でした」
→このように印象的な形で見出しやアイキャッチに使える名言が得られる可能性大です。
・・・というような感じで、トレーニングは進んでいきました。今回のトレーニングにおける私の評価が高かったポイントは、以下の3点です。
質問①の解答
「なぜ、佐藤さんはご自身の失敗体験を新人向け研修で話そうと思われたのですか?」
→ 動機や価値観を問う「Why型」の質問。語りの核心に近づける。
質問②の解答
「佐藤さんのお話の中で、新人が強く興味を惹かれたと感じられたのは、どの部分ですか? また、その理由は何だと思いますか?」
→ 自分の話が相手にどう届いたかを問う、視点の切り替えを促す質問。
質問③の解答
「今、思えば、佐藤さんが『新人だった時に先輩からかけて貰っていれば!』と思う言葉はなんでしょうか?」
→ 感情の奥を掘り起こし、ストーリーを人間味あるものにする問い。
AIとの対話で見えてきた、「良い問い」の正体
AIと「問い」を交わす中で、自分のクセや盲点に気づきました。特に大きかったのは、以下の3点です。
① 質問は「事実」ではなく「意味」に向けて掘る
よくあるミスが、「何が起きたか」を聞いて終わってしまうこと。
でも読者が知りたいのは、「それがその人にとってどういう意味を持っていたのか」。
② 「話しやすさ」と「深掘り」を両立する問いの構造
浅すぎると当たり障りのない会話で終わり、深すぎると相手が身構えてしまう。
「具体例+感情+振り返り」という構造が効果的だと感じました。
③ ストーリー構造を意識した設計が鍵
「始まり → 転機 → 気づき → 今の考え方」
この流れに沿って質問を設計すると、語りに一貫性が生まれ、読者にとっても理解しやすくなります。
AIが“最高の練習相手”である理由
AIとの対話の最大の利点は、何度でも遠慮なく練習できること。
- 自分の質問の傾向を客観視できる
- 返答がすぐに返ってくるので仮説検証が早い
- 「もっと深掘りするなら?」という視点を養える
そして何より、AIは疲れ知らず。こちらがどれだけ繰り返しても、毎回丁寧に付き合ってくれる、頼もしい“質問の練習相手”です。
ただし、ひとつ留意しておきたいのは、AIは基本的に肯定的で、悪いことをあまり言わないという点です。建設的な反応が多い分、「本当に鋭い指摘がほしい」ときには物足りなさを感じることもあります。 その場合は、プロンプトに「厳しく評価してください」「意地悪な視点で指摘してください」といった一言を加えると、よりバランスの取れたフィードバックが得られます。
社内報インタビューは「翻訳」であり、「編集」でもある
社内報インタビューは、ただ話を“聞く”だけでは不十分です。語りの意図を汲み取り、再構成し、組織に届ける「翻訳者」としての力が求められます。社員の言葉の裏にある価値観や背景をすくい取り、それを読み手にわかりやすく、共感を呼ぶかたちに編集する。
この「翻訳+編集」的なスキルを鍛えるには、問いを通じて“深く聴く姿勢”が必要です。AIとのトレーニングは、その姿勢を手軽に磨くことができるツールでもあります。
最後に:問いの質が、組織の関係性を変える
社内報のクオリティは、取材の現場で決まるといっても過言ではありません。そしてその取材の質を決めるのが、「問いの力」。
AIを活用したトレーニングは、編集者が「聴く力」「掘る力」「翻訳する力」を育てる、手軽で効果的な方法です。
質問が変われば、引き出せる言葉が変わる。
引き出せる言葉が変われば、社内の共感が生まれる。
あなたもぜひ、AIを“トレーナー”にしたインタビュートレーニングを試してみてください。