同じ内容でも伝え方次第:『朝三暮四』に学ぶ社内報の工夫

 「朝三暮四」という故事成語をご存じでしょうか?古代中国の宋の国で、猿を飼っていた男が、餌となるどんぐりの量を減らすために「朝3つ、夕方4つ」と伝えたところ、猿たちは怒りました。しかし、「朝4つ、夕方3つ」と言い直すと、猿たちは満足したという話です。この話は、結果が同じであっても、伝え方次第で相手の受け取り方が大きく変わることを示しています。

 この教訓は、情報を伝える場面が多い社内報にも活かせます。同じ事実や内容であっても、その伝え方や見せ方によって、社員が感じる納得感やモチベーションは大きく変わります。社内報が情報をただ届けるだけでなく、社員が共感し、行動に移したくなるような伝え方を工夫することが求められるのです。

情報の伝え方が納得感を左右する

 社内報では、施策の進捗や目標の達成状況、新たな方針など、さまざまな情報を社員に届けます。しかし、ただ「事実」を伝えるだけでは、社員に響かない場合があります。たとえば、数字やデータだけを羅列しても、それがどうして重要なのか、どのような影響があるのかが伝わらなければ、社員はその情報に関心を持てません。

 「朝三暮四」の話が示すように、同じ結果であっても、表現を変えるだけで受け手の印象が変わります。たとえば、「売上達成率が75%」という一文をそのまま伝えるのではなく、「この75%は営業部全体の努力が結集した成果です。さらに達成するために、次の一歩をどう踏み出すかを考えましょう」というように、数字にストーリーを添えることで、社員はその数字をより意味のあるものとして受け取るでしょう。

背景と意図を丁寧に伝える重要性

 特に変化の多い現代では、新たな方針や施策が頻繁に発表されることがあります。このような場合、ただ「新しいことを始めます」という発表では、社員は不安や疑念を抱きやすくなります。なぜその変化が必要なのか、その意図や背景を丁寧に伝えることが欠かせません。

 たとえば、新しいシステムを導入するときに、「効率化のため」とだけ伝えるのではなく、「これにより日々の業務負担が軽減され、社員一人ひとりがより重要な業務に集中できるようになります」という形で、社員にとっての具体的なメリットを伝えることが重要です。このように情報の伝え方を工夫することで、社員が変化を前向きに受け入れる環境を作ることができます。

表面的な伝達に終始しないために

 一方で、「朝三暮四」の話は、伝え方を変えることで相手を納得させるという一面を持ちながらも、表面的に見えを良くするだけでは不十分であることを示唆しています。社内報でも、単なる数字や方針の発表に終始すると、社員に一貫性や誠実さが伝わらず、信頼を損ねるリスクがあります。

 たとえば、毎回異なるテーマで情報を小出しにするだけでは、「結局、この会社は何を目指しているのか」が社員に伝わりにくくなります。一貫性のあるメッセージを軸に持ち、情報を整理して発信することで、社員が社内報を信頼できるものとして認識するようになります。

社内報で納得感を育む工夫

『朝三暮四』の教訓を活かし、社員に納得感を与える社内報作りには、次のような工夫が考えられます。

  1. ストーリーを加える
    事実だけでなく、その背景やエピソードを紹介することで、情報に深みを持たせる。
  2. 社員にメリットを感じさせる表現
    数字やデータを提示する際は、それが社員の日々の仕事や成長にどう繋がるかを具体的に示す。
  3. 一貫性のあるメッセージを発信
    会社が目指す方向性やビジョンを軸に、全体として整合性のある内容を提供する。
  4. 現場の声を反映する
    社員の視点や意見を取り入れた記事を掲載し、社内報を双方向のコミュニケーションツールとして活用する。

結論:同じ内容でも伝え方が変える社内報の力

 『朝三暮四』は、同じ結果でも伝え方次第で受け手の反応が大きく変わることを教えてくれます。この教訓は、情報を発信する社内報においても非常に重要です。社員が共感し、納得し、次の行動に繋げるためには、伝え方の工夫が欠かせません。

 ただ事実を並べるだけでなく、その背景や具体例、社員にとってのメリットを丁寧に伝えることで、社内報は単なる情報提供のツールを超え、社員と組織をつなぐ架け橋になります。同じ内容でも伝え方を変える工夫を加え、社内報を社員にとって信頼される媒体にしていきましょう。