全館禁煙で消えた“調整の場”を取り戻す!社内報で再構築する柔らかなコミュニケーションの場

 近年、健康促進やSDGsの取り組みの一環として、多くの企業が社屋の全館禁煙化を進めています。禁煙化は、社員の健康維持や生産性の向上、企業イメージの改善といったメリットが期待されます。しかし、一方で、日本企業に根付いていた「タバコ休憩」の文化が失われることにより、意外な弊害が生じることもあります。

 タバコ休憩は、単なるリフレッシュの場だけでなく、非公式なコミュニケーションや調整、根回しの場として機能していました。この「緩やかな調整の場」がなくなることで、社員同士の自然な対話や情報共有が減少し、会議が硬直化するリスクがあります。こうした問題に対して、社内報を活用して新たな調整の場を提供できないかを考察しました。

1. 「根回し」の場としての社内報活用法

フォーマルとインフォーマルを融合した記事構成

 タバコ休憩は、公式な会議では話しにくい意見や個人的な考えを自由に交換する場でした。社内報は通常フォーマルな情報発信が中心ですが、意図的に「インフォーマルなコーナー」を設けることで、タバコ休憩のようなリラックスした対話の雰囲気を再現できます。

 例えば、「社員の声」コーナーを設置し、匿名で意見やアイデアを投稿できる場を提供します。会議で言いにくいことや日々の小さな疑問を気軽に共有できるようにすることで、社員同士の意見調整が促進されます。また、「フリートーク特集」を定期的に掲載し、雑談的な記事を取り入れることで、社員がリラックスしながら読み、会話のきっかけを作ることができます。

会議前の「根回し特集」でスムーズな合意形成をサポート

 日本企業では、会議前の非公式なやり取りで意見の調整を行う「根回し」が重要です。タバコ休憩がなくなった今、社内報がこの根回しの役割を果たす場として機能することが期待されます。

 例えば、社内報に「次回の会議テーマ特集」を設け、事前に議題を紹介し、社員から意見や質問を募集します。これにより、会議前に非公式な意見交換ができ、会議の進行がスムーズになります。また、「根回しアンケート」を実施し、議題に対する予備的な意見を集め、その結果を社内報で共有します。社員が他の意見を把握できるようになることで、合意形成が容易になります。

2. 部門間コミュニケーションの促進

部門横断型の特集記事で自然な対話を生み出す

 タバコ休憩は、普段接点の少ない異なる部門の社員同士が偶然会話を交わす場でもありました。全館禁煙化により、こうした非公式なコミュニケーションの機会が減少することで、部門間の連携が弱まるリスクがあります。

 例えば、社内報で「部門紹介」や「部門連携プロジェクト特集」を組み、異なる部署の取り組みや成功事例を紹介します。これにより、他部門の活動や考え方を理解しやすくなり、自然な対話のきっかけが生まれます。また、「クロストーク特集」では、異なる部門の社員がペアになり、自由なテーマで対話するインタビュー形式の記事を掲載します。異なる視点や意見を共有することで、部門間の関係性が深まります。

オンラインツールとの連携でコミュニケーションを補完

 紙の社内報だけではリアルタイムな対話が難しいため、デジタルツールとの連携も重要です。オンラインフォーラムや社内チャットを活用し、社内報で紹介したテーマに関連する雑談や意見交換が行える場を提供します。

 例えば、社内報の記事に関連したオンラインフォーラムを開設し、社員が自由に意見交換できる場所を設けます。これにより、紙媒体とデジタルツールが連携し、非公式なコミュニケーションが促進されます。また、「社内報フィードバック」チャンネルを社内チャットに設置し、社員が記事への意見や感想をリアルタイムで共有できるようにします。これにより、記事がきっかけとなって社内での対話が活性化します。

3. 上司と部下のフラットな交流をサポート

「上司への質問コーナー」でフランクな対話を促進

 タバコ休憩は、上司と部下が肩の力を抜いてフラットに会話できる場でもありました。このような場がなくなると、若手社員や新入社員が上司に気軽に相談する機会が減少します。社内報では、上司と部下のフランクな交流をサポートする工夫が求められます。

 例えば、「上司への質問コーナー」を設け、社員が匿名で質問を投稿できる形式にします。上司がそれに答える記事を通じて、上下関係を超えたフラットなコミュニケーションが生まれます。また、「リーダーインタビュー」では、上司が日常の業務や考え方を語る記事を掲載し、親しみやすさを感じさせます。

「雑談コラム」で親しみを演出

 上司が趣味や日常の出来事について語る「雑談コラム」を社内報に設けることで、親しみやすさを醸成します。これにより、部下は上司に対して親しみを感じ、相談しやすくなるでしょう。

結論:社内報が「緩やかな調整の場」を再構築する

 全館禁煙化により失われた「タバコ休憩」の役割を、社内報は新たな形で代替することができます。社員同士が自由に意見交換できる場を提供し、フォーマルとインフォーマルの融合を目指すことで、会議のスムーズな進行や部門間の連携が強化されます。紙媒体とデジタルツールの連携を活かし、社員全員が参加しやすい社内報を構築することが、企業の健全なコミュニケーション文化の再構築につながるでしょう。