デジタル時代の落とし穴〜“双方向ツール”が招くドッチボールコミュニケーションを社内報で改善する
リモートワークの拡大に伴い、チャットツールやメール、オンライン会議が日常のコミュニケーション手段として定着しました。これらのデジタルツールは、本来「双方向の対話」を促進するものとして導入されましたが、実際には「ドッチボール型」のやり取りが増えるという問題が見られます。メッセージが瞬時に返されることが重視され、相手の意図を汲み取る時間や深く考えるプロセスが省略されることが多くなっているのです。
このような課題に対し、社内報は、じっくりと考え、深く理解するための場として再評価されています。デジタルツールの利便性を活かしつつ、表面的なコミュニケーションの「落とし穴」を補完するために、社内報をどのように活用できるかを深掘りしてみましょう。
1. 「ドッチボール型」と「キャッチボール型」コミュニケーションの違い
ドッチボール型コミュニケーションとは?
ドッチボール型のやり取りでは、メッセージがすぐに返されることが重視されるあまり、相手の意図を十分に受け取らずに反射的に応答してしまいます。短いメッセージやスタンプだけで会話が進むため、誤解が生じやすく、意見の食い違いが増えることがあります。
例えば、チャットでの短いやり取りでは、「はい」「いいえ」「了解」といった反応が多く見られますが、これらは相手の意図や感情を深く理解することなく返されるケースが多いです。結果として、相手が本当に伝えたいニュアンスや背景が見逃され、すれ違いが生まれることがあります。
キャッチボール型コミュニケーションの特長
キャッチボール型のコミュニケーションは、相手のメッセージをしっかり受け取り、その意図や背景を考えた上で返す対話です。ここでは、「聞く姿勢」や「共感」が重視され、相手に寄り添った応答が行われます。
相手の話をよく聞き、「この部分はどういう意味ですか?」「もっと詳しく教えてもらえますか?」といった確認質問が含まれることで、誤解が減り、信頼関係が築かれやすくなります。キャッチボール型の対話は、会話のスピードではなく、深さを重視するのが特徴です。
2. 社内報が「ドッチボール型」から「キャッチボール型」への移行を支援する
デジタルツールの普及で、スピード感は向上しましたが、その反面、表面的なやり取りが増え、深い対話が失われるリスクがあります。ここで社内報が果たせる役割について考えてみましょう。
社内報の「じっくり読む」価値を活かす
社内報は、デジタルツールのようなリアルタイム性はありませんが、その分、社員がじっくりと内容を読み、深く考える時間を提供します。記事を通じて、意図的に「一呼吸置く」文化を育てることが可能です。
例えば、「深掘り特集」や「リフレクション記事」では、現在進行中のプロジェクトや重要な意思決定に関する背景情報を詳しく解説し、社員が考える時間を持てるようにします。これにより、デジタルツールでは省略されがちな背景情報やコンテクストが伝わりやすくなります。
具体的な提案:
- 「プロジェクト背景解説」コーナーを設置し、決定事項や会議の議題に至るまでの経緯を丁寧に説明します。社員がその意図を理解することで、会話がより深く、建設的になります。
- 「リフレクション特集」では、社員が自分の経験や考えを振り返る記事を募集し、じっくりと内省する機会を提供します。これにより、表面的な返答ではなく、深く考えた意見交換が促進されます。
3. 双方向ツールの補完としての社内報の活用法
誤解やすれ違いを解消する社内報の「橋渡し」役割
チャットやメールでは、短文やスタンプでの反応が中心となり、誤解が生じやすくなります。この問題を解決するために、社内報が「誤解を解く場」として機能することが期待されます。
「誤解を解く特集」では、デジタルツールでのやり取りに関する誤解や疑問を取り上げ、詳しい解説を行います。例えば、上司の「了解です」という一言が、部下には「冷たい」と受け取られているケースがあれば、その背景や意図を解説する記事を掲載します。
具体的な提案:
- 「リアルな声特集」では、社員が感じているデジタルコミュニケーションの問題点や改善案を集め、そのフィードバックを元にした改善策を提示します。
- 「FAQコーナー」を設け、デジタルツールでの誤解が生じやすいフレーズや表現について解説する記事を定期的に掲載します。
4. オフラインの対話を促進する社内報の工夫
社内報がオフラインの「対話の場」を生み出す
デジタルツールでは、効率的なやり取りが求められるため、深い対話が難しくなりがちです。社内報は、社員同士の対話のきっかけとして活用できます。特に、記事を読んだ社員がその内容について話し合う「ディスカッション特集」や、「オープン対話セッション」の案内を掲載することで、オフラインでの深いコミュニケーションが促されます。
具体的な提案:
- 「対話を促す特集」では、記事を読んだ後に社員が集まり、オフラインで自由に意見交換するイベントを開催します。これにより、デジタルだけでは得られない共感や理解が深まります。
- 「フィードバックを元にした記事作成」では、読者の感想や質問を次号の社内報で取り上げ、双方向のやり取りを通じて内容を深化させていきます。
結論:社内報がキャッチボール型コミュニケーションを育む鍵となる
デジタルツールは双方向の対話を促進する一方で、速さが重視されるあまり、表面的な「ドッチボール型」コミュニケーションに陥ることがあります。こうした問題に対し、社内報はじっくりと考え、深く理解する場を提供することで、キャッチボール型のコミュニケーションを再構築する力を持っています。紙媒体の特性やデジタルツールとの連携を活かし、社員同士の理解と共感を育む場として、社内報を積極的に活用していきましょう。