「誰も教えてくれない取材」〜スタンダードを知らない難しさ

 社内報の制作における取材という工程で、実は最も見過ごされがちなのが、「取材を教えてくれる先輩がいない」という現実です。取材に関して、新聞社やメディア業界に入らない限り、体系的な指導を受ける機会はほとんどありません。結果として、取材スキルは独学で身につけることが一般的です。このため、多くの人は「取材のスタンダード」そのものを知らずに取材を行っています。

1. 取材の「スタンダード」が不明確

 社内で取材を経験した人が少ない場合、どのように取材を進めるべきか、また何が良い取材なのかを知らないまま、なんとなくで進めてしまうことが多いのが現実です。この結果、必要な情報が集まらなかったり、取材内容が薄いものになったりすることがあります。また、後輩に取材を教える機会があっても、自分自身が明確な基準を持っていないため、適切な指導ができないという問題も発生します。

2. 独学での限界

 多くの取材担当者は、最初は「とりあえずやってみる」という形でスタートします。具体的なノウハウを教えてもらうことがなく、自己流で取材を行うため、気づかないまま行う取材では、質にばらつきが生じることがあります。独学では、失敗から学ぶこともできますが、効率的にスキルを向上させるのは難しく、時間がかかります。

3. 教えることの難しさ

 さらに、取材を後輩に教える際、標準的な取材方法を知らなければ、どう教えれば良いのか分からないという状況にも陥ります。経験はあっても、それを具体的に言葉や方法として体系化できなければ、他の人に伝えるのが難しくなります。そのため、取材の質が個人によって異なり、全体として社内報の一貫性やクオリティが低下するリスクもあります。

4. 取材スキル向上のために

 このような取材の「誰も教えてくれない」という状況を改善するためには、標準的な取材手法を学び、スキルを磨く機会を意識的に作ることが重要です。以下の方法を取り入れることで、取材力の向上が期待できます。

1. 外部セミナーや研修への参加

 取材に関する外部セミナーや研修に参加することで、取材の基礎から応用まで体系的に学ぶことができます。新聞社やメディア業界出身の講師から直接指導を受けることで、独学では学びきれないテクニックを習得できます。

2. 取材マニュアルの作成

 社内で取材の基準やフレームワークを共有するためのマニュアルを作成するのも有効です。例えば、「事前リサーチの重要性」「オープンクエスチョンの活用」「取材後の確認作業」など、具体的なポイントをまとめておくことで、社内での取材スキルの底上げが期待できます。一番実用性があり、汎用性が高いのは、取材項目を決めてしまうことです。これはコーナーやテーマ、企画内容が決まっている場合、定番ものには効果を発揮します。

3. ロールプレイングやフィードバック制度

 新人や取材経験の浅い担当者に対しては、ロールプレイング形式で模擬取材を行う機会を設け、取材の流れを実践的に学ぶ場を作ると効果的です。また、実際に取材を終えた後には、フィードバックを行い、どの部分が良かったか、どこが改善点なのかを具体的に指摘することで、次回以降の取材に活かせるようになります。

5. 取材を「教える」文化の醸成

 社内報に限らず、取材は企業文化や組織の情報共有においても重要な役割を担います。取材を上手く進めるための知識を社内で共有し、取材が単なる「情報集め」ではなく、組織全体のコミュニケーションを円滑にするためのスキルであると理解してもらうことが大切です。

終わりに

 取材は「誰も教えてくれない」部分が多く、経験や独学による習得が求められる場面も多いです。しかし、スタンダードな取材手法を理解し、それを社内に共有することで、取材の質を高め、より効果的な社内報制作が可能となります。スキルの向上には、意識的な学びとフィードバックが不可欠です。