地動説 vs 天動説:視点の違いが社内報に与える影響

 「社内報は、社員に情報を伝えるためのものだ」。そう考えていませんか?確かにそれも一つの役割です。しかし、社内報の本当の力は、それ以上のものです。視点を変えれば、社内報は組織の価値観や風土を形作り、社員同士の絆を深めるための重要なツールになります。

 ここで、「地動説」と「天動説」という比喩を使って、社内報が持つ可能性を探ってみましょう。地動説は「視点の転換」、天動説は「固定観念」を象徴します。それぞれの視点で作られた社内報の特徴を紐解き、視点を変えることでどれだけの変化が生まれるのかを考えてみます。この対比を通じて、あなたの社内報が持つ未来の可能性を一緒に見つけていきましょう。

固定観念が作る「天動説的な社内報」

 かつて天動説が「宇宙の真実」として信じられていたように、私たちの組織文化にも長年受け継がれてきた慣習や固定観念があります。天動説的な社内報は、上層部や経営陣の視点に偏りがちです。このような社内報では、例えば経営者からの一方向的なメッセージや、業績報告の羅列が中心になります。その内容は、会社の伝統や成功体験を美化し、「変わらない良さ」を強調するものが多い傾向があります。

 社員にとっては、読むたびに「経営陣のためのメディア」だと感じられ、親近感を持ちにくくなります。さらに、新しいアイデアや挑戦を社員が提案しても、それが社内報に反映されることは少なく、社員の関与感が低下する恐れもあります。

視点の多様性を反映する「地動説的な社内報」

 一方で、地動説的な社内報は、多様な視点を取り入れ、社員一人ひとりの物語を紡ぎます。このような社内報では、上層部のメッセージだけでなく、現場で働く社員のインタビューや、新入社員の挑戦、さらには失敗から学んだ教訓なども積極的に取り上げます。

 例えば、あるIT企業では、社内報に「社員の声」コーナーを設けました。ここでは、現場の社員が自由に意見を述べたり、自分の業務の中で気付いたことを共有する場を提供しました。その結果、社員同士の共感や理解が深まり、「社内報は会社のことを知る窓口」だけでなく、「自分たちの声が届く場」だという認識が広がりました。

天動説から地動説への転換

 視点の転換は容易ではありません。天動説から地動説に至るまで、歴史の中では長い議論や葛藤がありました。同様に、社内報が従来のフォーマットや内容から脱却するには、時間と努力が必要です。しかし、変化を受け入れることは、社内報を「社員全員が参加できるメディア」に変えるための第一歩となります。

 例えば、現場の意見を収集するために定期的に社員アンケートを実施したり、社員が企画段階から参加する仕組みを作ることが考えられます。また、社内報の中に、社員が提案したアイデアや改善事例を特集するコーナーを設けるのも効果的です。

視点の違いが組織を動かす

 ある物流会社では、従来は管理職のメッセージを中心にした社内報を発行していました。しかし、社員が現場で感じた改善点や成功例を発信する「現場からの声」セクションを追加したところ、社員同士の協力意識が高まり、全体的な業務効率も向上しました。この取り組みは、単なる情報共有にとどまらず、社員のモチベーションや会社への帰属意識を高めるきっかけとなりました。

未来を築くための社内報

 視点の違いは、結果の違いを生みます。天動説的な固定観念に留まるのではなく、地動説的な発想で視野を広げ、社員の多様な声を反映することで、社内報は組織全体の活力を引き出す強力なツールになります。そして、その変化の中心には、読者である社員たちの新しい発見と気付きがあります。社内報が「現状を伝えるだけのもの」ではなく、「未来を築くためのもの」に進化するために、あなたの会社はどのような視点で社内報を作るべきでしょうか?