第129回 気まぐれ!メンズトークが放送されました!
第129回目のゲストは、NPO法人 未来へ 灯(あかり)倉敷事業所 所長 兼 就労相談支援員の大森誠禎さんをお迎えし、家庭を失った子どもや虐待を受けた子ども、児童養護施設や里親家庭で育つ若者など、社会的養護を必要とする人々への支援活動について伺いました。

■ 自己紹介と原点のストーリー
大森さんは、1961年、倉敷市生まれ。大学卒業後は建設会社に勤務し、港湾工事などに従事されています。その後、平成2年に倉敷市シルバー人材センターへ入職し、約30年にわたって会員や利用者との調整、受注・契約、事故対応など幅広い業務を担当されました。
2025年に退職後は、特定非営利活動法人「未来へ」灯(あかり)倉敷事業所の所長に就任。現在は就労相談や一人暮らし体験の支援などを通じて、社会的養護を必要とする若者の自立を後押しされています。
■ 活動を始めたきっかけ
大森さんの活動の原点は、義理の弟さんでした。
12〜13年前、義理の弟が「親がいない子ども」や「虐待を受けた子ども」を支援したいと津山で活動を始めたことが、大森さんにとって大きな転機となりました。
その後、2014年に活動はNPO法人「未来へ」として正式にスタート。放課後デイサービスや自立支援、学びの場「サポートスクール ワタシノミライヘ」などを展開していきます。
そして2024年には、国の「社会的養護自立支援拠点事業」が発足。岡山県を通じて委託され、津山に加え倉敷でも新たに事業所が開設されることになりました。こうして誕生したのが「灯(あかり)倉敷事業所」であり、大森さんはその所長として活動を牽引されています。
■ 具体的な活動
大森さんが所長を務める「灯(あかり)倉敷事業所」では、社会的養護を必要とする子どもや若者に向け、さまざまな支援活動を展開しています。
1. 相談支援業務
住まいや生活上の困りごと、就労に関する相談を幅広く受け付けています。
たとえばDVシェルターの紹介やハローワークへの同行など、必要に応じて適切な機関へつなぐ役割を果たしています。
「困ったときに誰に相談すればいいか分からない」若者にとって、大森さんたちが“最初の窓口”となっています。
2. 一人暮らし体験
児童養護施設に入所中の子どもを対象に、1泊2日の「一人暮らし体験」を実施。
倉敷駅で迎え、食材費2,000円を渡し、自炊を含めた生活を経験します。
今後は対象を、里親家庭で育つ子どもやヤングケアラー、自立支援施設に通う若者へと広げていく予定です。
小さな実践を通じて、自立へのステップを支えています。
3. 「灯 届けるプロジェクト」
服や本、生活用品などを無償で届ける活動です。
対象は、児童養護施設や児童自立援助ホームの在所者・出身者、里親家庭やその出身者、生活に困っている子どもや若者、虐待経験のある子どもたちなど。
物資の配達は行っておらず、必要な人に直接取りに来てもらう仕組みです。
“物”を届けるだけでなく、“つながり”を届けることにも力を入れています。
4. 退所前セミナー
社会に出る直前の児童を対象に、生活に必要なルールやマナーを学ぶセミナーを開催。
今年度は5回のセミナーを実施し、卒園後の生活をスムーズに始められるようサポートしています。
背景にある若者たちのリアル
児童養護施設や里親家庭で育った子ども、自殺未遂を経験した若者など、支援を必要とする人々の背景は実に多様です。
中でも大きな課題は「高校卒業後に相談先が途切れてしまうこと」。
大森さんたちは、その“空白”を埋める橋渡し役として、地域で子どもや若者を支え続けています。
地域で果たす役割
「灯(あかり)倉敷事業所」は、倉敷市内の児童養護施設3カ所を管轄。岡山市や津山にも拠点があり、津山では3つの施設をカバーしています。地域ごとに連携しながら、社会的養護を必要とする子どもや若者に切れ目のない支援を届けています。
放送を通じて
番組の後半では、大森さんの具体的な取り組みを一つひとつ聞きながら、支援が「特別なこと」ではなく「地域に根ざした日常的な活動」であることを実感しました。社会的養護を必要とする若者たちの未来に、少しでも安心と希望の光をともす——その思いが「灯」という名前に込められているのだと感じます。
――また次回の放送も、お楽しみに。