ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件

著 者:楠木 建
出版社 ‏ : ‎ 東洋経済新報社 (2010/4/23)
発売日 ‏ : ‎ 2010/4/23

 『ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件』は、少々古い本ではありますが、いまだに競争優位をどうやって自社で作り出すかを考える際に、何度も読み返したくなる一冊です。何年か前の年末の大掃除で、古本屋に売ってしまったことを今でも後悔しています。再び手元に置きたくなるほど印象深い内容でした。

 本書では、「戦略」とは何か、「違い」とは何かという問いに対し、従来のポーターの競争戦略論だけでは捉えきれない視点を提供しています。特に「ストーリー」という時間軸と関係性の要素を加えることで、競争優位の戦略を新たな角度から解き明かしているのが特徴です。

 筆者が提唱する「キラーパス」という考え方は非常に興味深いものでした。同じ業界内の競合企業から見て非合理的に思えるような要素を戦略に組み込むことで、持続的な競争優位と利益を生み出す力になるというのです。一般的な戦略論では見落としがちなポイントに鋭く切り込み、それを分かりやすく解説している点に感銘を受けました。

 また、この本の魅力は事例を多く取り入れているところにあります。戦略論というと理屈が多く難しい印象を受けがちですが、具体的な事例を中心に据えることで、読者にとって非常に親しみやすい内容に仕上がっています。個々の事例をストーリーとして捉えることで、戦略が抽象的な概念ではなく、実践可能なものとして見えてくるのです。

 500ページ近いボリュームにもかかわらず、一気に読み進めてしまえるほど引き込まれる内容でした。戦略について考える際、単なる理論やフレームワークだけでは物足りない方にとって、この本は大きなヒントになると思います。

 もし、「競争戦略」を新しい視点で捉え直したいと考えている方や、自社の「違い」をどう際立たせるか悩んでいる方がいれば、この『ストーリーとしての競争戦略』をぜひ手に取ってみてください。一つひとつの事例と理論が絡み合い、戦略の本質を浮かび上がらせてくれる一冊です。